バッド・バニーのハーフタイムショーが映し出した「文化戦争の終焉」
スーパーボウルでのバッド・バニーのパフォーマンスが、トランプ政権下での「反ワーク」ムードの限界を露呈。文化の主導権は本当に右派に移ったのか?
1億2800万人が見守る中、プエルトリコ出身のスーパースターバッド・バニーがスーパーボウルのハーフタイムショーで歌い踊った。しかし、この圧倒的な成功が、思わぬ政治的議論を巻き起こしている。
トランプの怒りと共和党の戸惑い
「スーパーボウルのハーフタイムショーは絶対にひどい、史上最悪の一つだ!」ドナルド・トランプ大統領は自身のSNSでこう投稿した。「この男が何を言っているのか誰も理解できないし、ダンスは気持ち悪い」と続けた。
一方で、興味深い反応を見せたのが共和党支持者のアレクシス・ウィルキンスだった。彼女は民主党の「オール・アメリカン・ハーフタイム with バッド・バニー」という投稿を見て、「共和党はもっと良いメッセージングで団結する必要がある。このブランディングは素晴らしく、すべての民主党員がこれに賛同できる」と述べた。
彼女の懸念は明確だった。バッド・バニーのショーが大成功を収めたことで、「反ワーク」の文化的優位性が揺らいでいるのではないか、ということだ。
「バイブス・シフト」の幻想
2024年の選挙後、アメリカメディアでは一つの物語が形成された。「バイブス」が「シフト」し、アメリカはもはや「ワーク」なエンターテインメントや有名人に興味を示さなくなった、というものだ。
ビル・マーは「民主党がどれだけしくじったかって?トランプがクールになったんだ」と語った。億万長者たちはリベラルな大義への表面的な支持を捨て、企業はDEI政策を廃止し、若者たちは公然と差別的な言葉を使えることに興奮していると報じられた。
ニューヨーク・タイムズのエズラ・クラインは「トランプの文化的勝利は政治的勝利を上回っている」と指摘した。選挙は僅差だったが、文化的な影響は圧倒的だった、と。
現実が物語る別の真実
1年後の今、その「バイブス・シフト」は本当に起きているのだろうか?
2025年の文化的成功例を見ると、人種差別の恐怖を描いた『Sinners』、NHL内のホモフォビアと闘う同性愛者ホッケー選手を描いた『Heated Rivalry』などがある。グラミー賞の年間最優秀アルバム賞はバッド・バニーが受賞し、スペイン語アルバムとして初の快挙となった。
最も注目を集めた政治家は、公然と社会主義を掲げながらもトランプ自身を魅了したニューヨーク市長ゾーラン・マムダニだった。一方、JDヴァンス副大統領はオリンピックでブーイングを受け、トランプ支持の中核だった男性向けポッドキャスターたちでさえ政権の政策を批判している。
ジョー・ローガンは「本当に我々がゲシュタポになるのか?『書類を見せろ』と言うのか?それが我々の到達点なのか?」と疑問を呈した。
文化の真の所有者
バッド・バニーのパフォーマンスは、プエルトリコへのラブレターであり、プエルトリコのアイデンティティを独自の文化として祝福するものだった。彼は「憎しみより強いものは愛だけだ」「共に、我々は皆アメリカだ」というメッセージで締めくくった。
対抗プログラムとして、保守系組織ターニングポイントUSAが「オール・アメリカン・スーパーボウル・ハーフタイムショー」を開催したが、メイン出演者のキッド・ロックは口パクで歌い、視聴者数は1800万人にとどまった。バッド・バニーの1億2800万人とは対照的だった。
スーパーボウルのような「冷酷なまでに資本主義的で社会正義に無関心」なイベントでさえ、ラテン文化の活力を祝うショーに観客が熱狂する。これが、トランプ政権がラテン系移民を暴力的に逮捕している最中に起きているのだ。
記者
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