ケニアの大地溝帯が「グレート・カーボン・バレー」に?地熱を利用したCO2直接回収の最前線
ケニアのグレート・リフト・バレーで、地熱の余剰エネルギーを利用したCO2直接回収(DAC)プロジェクトが進行中。スタートアップ「オクタビア・カーボン」の挑戦と、「グレート・カーボン・バレー」構想の可能性と課題を解説します。
ケニア中南部のナイバシャ湖周辺。ここでは大地が静止することを拒んでいるかのように、地面の裂け目から蒸気が噴き出し、熱湯の池からは湯気が立ち上ります。約2500万年前の地殻変動によって生まれた「グレート・リフト・バレー(大地溝帯)」は、地表から数キロ下にマグマが横たわる、まさに地球のエネルギーが脈打つ場所です。
この地質学的な特徴は、ケニアの電力の約4分の1を供給する5つの地熱発電所を生み出しました。しかし、このプロセスで発生するエネルギーの多くは、需要不足から未利用のまま大気中に放出されたり、地下に残されたりしています。この「余剰エネルギー」に目を付けたのが、スタートアップの「オクタビア・カーボン(Octavia Carbon)」です。
2024年6月、同社はナイバシャ湖北部の町ギルギルで、野心的な実証実験を開始しました。地熱発電の余剰エネルギーを利用して、空気中から二酸化炭素(CO2)を直接回収する「ダイレクト・エア・キャプチャー(DAC)」と呼ばれる技術のプロトタイプ4基を稼働させたのです。1基あたりの初期回収能力は年間わずか60トンと小規模ですが、その目的はまず「ケニアでDACが可能であること」を証明することにあります。
この動きは、より大きな構想の一部です。ケニア人起業家のビルハ・ンディラング氏とジェームズ・イルング・ムワンギ氏が設立した「グレート・カーボン・バレー(GCV)」社は、この地域をDACをはじめとするグリーン産業の一大拠点に変えることを目指しています。GCVは、世界最大のDACプラントをアイスランドで運営するスイスのクライムワークス社など、有力な海外企業をすでに誘致しており、ケニアが気候変動対策の最前線に立つことを狙っています。
なぜケニアなのか?
ケニアがDACの理想的な場所とされる理由は2つあります。1つ目は、豊富で安価な再生可能エネルギーである地熱です。ケニアの電力網の約90%はすでに再生可能エネルギーで賄われており、DACは既存の電力網からエネルギーを奪うのではなく、むしろ未利用エネルギーの新たな需要を創出します。これにより、電力インフラの拡充を促し、未だ電力を利用できない約25%の国民への供給拡大も期待されています。
2つ目は、CO2を貯留するのに最適な地質です。この地域の地下には玄武岩が多く存在し、CO2と反応して炭酸塩鉱物を形成します。これにより、回収したCO2を半永久的に安定した形で固定化できるのです。この方法は、植林などの自然ベースの解決策よりも永続性が高いとされ、炭素クレジットの購入者にとって魅力的だと考えられています。
山積する課題と批判
しかし、この壮大なビジョンには数多くの課題が待ち受けています。まず、DAC技術はまだ大規模での実績が乏しく、運転コストが非常に高額です。欧州の炭素市場ではCO2クレジットが1トンあたり約84ドルで取引されるのに対し、DACクレジットの平均価格は約450ドルと、5倍以上の差があります。一部の批評家は、DACが汚染企業に再生可能エネルギーへの移行を遅らせる「免罪符」を与える可能性があると警鐘を鳴らしています。
チュニジアの経済学者ファデル・カブーブ氏は、「この技術はまだ成果を出しておらず、すぐに出せる見込みもありません。なぜ地球全体の未来を、少数の人々と実績のない技術の手に委ねるのでしょうか?」と疑問を呈します。
さらに、地元のマサイ族コミュニティとの根深い問題も存在します。彼らは何世代にもわたってこの地に住んできましたが、過去の地熱発電所開発によって強制的に立ち退かされ、その恩恵である電力さえも十分に享受できていません。新たなDACプロジェクトが、こうした歴史的な不信感を増幅させる懸念もあります。
ケニアの若き才能が未来を拓く
こうした困難にもかかわらず、現場では希望が生まれています。オクタビア・カーボンでは、40人以上のエンジニアチームの多くがケニアの若者です。同社のエンジニア、ハンナ・ワンジャウ氏は、大学卒業後すぐにこのプロジェクトに参加しました。「現実世界の問題を解決しようとしていることに喜びを感じています。アフリカでは、多くの人がこのようなチャンスを得られるわけではありません」と彼女は語ります。
オクタビア・カーボンが開発した装置は、輸送コンテナに収まるモジュール式で、熱帯気候に合わせて最適化されています。地熱発電所で電力に変換されなかった熱エネルギーを80%以上利用する設計で、効率性を追求しています。
「グレート・カーボン・バレー」構想が成功すれば、ケニアに経済的な恩恵をもたらすだけでなく、グローバルサウス全体にとってDAC技術の有効性を証明する重要な試金石となるでしょう。しかし、そのためには技術的、経済的なハードルを乗り越え、何よりも地域社会との信頼を築くことが不可欠です。
---
本コンテンツはAIが原文記事を基に要約・分析したものです。正確性に努めていますが、誤りがある可能性があります。原文の確認をお勧めします。
関連記事
2022年に設立されたOshenの自律型海洋ロボット「C-Star」が、カテゴリー5のハリケーン下で世界初のデータ収集に成功。NOAAも認める海洋データ収集の新星を解説します。
MITが発表した2026年版「世界を変える10の技術」を解説。ナトリウムイオン電池、次世代原子力、そしてAI爆発を支えるハイパースケールデータセンターなど、気候テックの最前線に迫ります。
生物多様性特化型VCのSuperorganismが2590万ドルの第1号ファンドをクローズ。絶滅阻止や自然再生に取り組むシード期のスタートアップ35社への投資を目指します。Cisco Foundationらも参加する注目の新ファンドの詳細をChief Editorが解説。
インドが2026年に向けて、100万人の若者をAI人材に育成する大規模プログラムを開始。AI人材採用率33%で世界をリードする同国の戦略と、雇用への影響について詳しく解説します。