イラン戦争の「その後」—中東再編という幻想の代償
トランプ政権のイラン戦争は中東を「アメリカ好み」に変えるのか?専門家が警告する楽観的すぎる前提と、戦後に待ち受ける現実を分析。
戦争を始めるのは簡単だが、終わらせるのは困難だ。そして最も困難なのは、戦争が終わった後の世界を予測することかもしれない。
トランプ大統領は2月28日、「アメリカの歴代大統領が成し遂げられなかったこと」を実現するため、外交よりも武力を選択し、イランとの戦争に踏み切った。イスラム共和国は生存をかけた戦いとして迅速に反撃し、イスラエル、中東の米軍基地、湾岸諸国などに致命的なミサイルと無人機攻撃を仕掛けた。これはもはや地域戦争であり、石油・金融市場、サプライチェーン、海上交通、航空交通に世界的な影響を与えている。
楽観的すぎる「戦後構想」
しかし、UCLA国際関係研究所のダリア・ダッサ・ケイ上級研究員は、トランプ政権の戦後計画が一連の過度に楽観的な前提に基づいていると警告する。
政権は、イランの指導部と軍事能力を徹底的に破壊すれば体制が弱体化し、「イラン国民が立ち上がって政府を乗っ取る」ことができると主張している。たとえそうならなくても、イランは無力化され、内政問題に忙殺されて地域やアメリカの利益に脅威を与えることはもはやできないという論理だ。
現在のイラン体制を排除すれば、地域不安定化の最大要因の一つが取り除かれ、「アメリカ好み」の新しい中東が到来するとワシントンは想定している。
歴史が示す厳しい現実
だが、この戦争の結果は、こうしたバラ色の期待を大きく下回る可能性が高い。爆撃が終わった後、イランと地域は戦前よりも悪化するか、少なくとも改善しない可能性がある。
イランはベネズエラのように、ワシントンの意向に従うデルシー・ロドリゲスのような人物が控えている国ではない。アメリカとイスラエルによるイラン高官暗殺の後、トランプ自身も「我々が念頭に置いていた(新指導者候補の)大部分は死んだ」と認めている。
一部で支持される選択肢は、1979年革命で打倒された最後のシャー(国王)の息子、レザ・パフラヴィのような親米亡命者の擁立だ。しかし、彼がイラン国内でどれほど支持されているかは不明で、トランプですらイラン人が彼の指導を受け入れるかどうか疑問を表明している。
中東の根深い対立は残る
より重要なのは、イランの弱体化だけでは、中東全域で紛争を煽っている地域の不満や争いが解決されないことだ。
リビアやスーダンの長引く紛争では、アラブ諸国やトルコの方がイランよりもはるかに重要な役割を果たしている。イスラエル・パレスチナ紛争はイスラム共和国の出現よりもずっと前から始まっており、イラン体制の崩壊でそれを煽る分裂が修復されるわけではない。
イラクの民兵組織、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派など、イランが代理勢力への支援を通じて支配的役割を果たしてきた国々でも、これらのグループは自身の生存とイランの生存を同じように重視している。彼らには独自の国内政治プロジェクトと、テヘランだけに依存しない権力基盤がある。
日本への示唆と教訓
日本にとって、この中東情勢の混乱はエネルギー安全保障と海上交通路の観点から重大な意味を持つ。日本は原油輸入の約9割を中東に依存しており、ホルムズ海峡やスエズ運河の通行に支障が生じれば、エネルギー価格の高騰は避けられない。
また、日本企業の多くが中東諸国でビジネスを展開している。戦争の長期化は、これらの投資や貿易関係に深刻な影響を与える可能性がある。特に、日本が推進してきた「自由で開かれたインド太平洋」構想においても、中東の安定は重要な要素の一つだ。
戦争は地域の反米・反イスラエル感情を高める可能性も高い。湾岸諸国の世論がさらに正常化に反対する方向に向かえば、日本が仲介役として果たしてきた建設的な外交努力も困難になるかもしれない。
記者
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