ソフトウェア株は「売られすぎ」か?プライベートエクイティ大手の投資判断
Thoma Bravo共同創設者オーランド・ブラボ氏が、ソフトウェア株の現状と投資機会について語る。AI時代における企業価値の新たな評価軸とは。
1810億ドルの運用資産を持つプライベートエクイティ大手Thoma Bravoの共同創設者オーランド・ブラボ氏が、「ソフトウェア株は売られすぎている」と断言した。一方で、上場ソフトウェア企業300社のほとんどが「十分な利益を出していない」とも指摘する。この一見矛盾する発言の真意は何なのか。
利益なき成長の危険性
ブラボ氏の指摘は鋭い。現在の上場ソフトウェア企業の多くが売上高の倍数で評価されているが、これは「非常に危険」だという。
CNBCの番組で同氏は「これらの企業は売上の倍数で取引されているが、それは非常に危険だ」と語った。Thoma Bravoは2008年設立以来、ソフトウェア企業への投資に特化し、9月時点で1810億ドルの運用資産を持つ。
この警告は、特に日本の投資家にとって重要な意味を持つ。日本企業は伝統的に堅実な利益追求を重視してきたが、グローバル市場では売上成長を優先する企業が多く評価されてきた。しかし、金利上昇局面では、この評価軸が大きく変わる可能性がある。
AI時代の新たな価値基準
ブラボ氏が注目するのは「ドメイン専門性」だ。AIが技術的脅威となる中で、30年の専門知識を蓄積した企業の価値が再評価されているという。
「公開市場には今、非常に価値があるのに安い宝石のような企業がある。30年のドメイン専門性が製品に組み込まれた企業だ」と同氏は説明する。
この視点は興味深い。AIがコード生成を自動化する時代に、なぜ専門知識が重要なのか。ブラボ氏によると、研究開発チームの業務の80%は「コードを書くこと以外」だという。つまり、顧客理解、問題解決、システム設計など、人間の洞察力が必要な領域が依然として大きな価値を持つのだ。
投資家の視点:選別の時代
Thoma Bravoの最近の買収実績を見ると、人材プラットフォームDayforceを123億ドルで、航空ソフトウェアJeppesen ForeFlightを105.5億ドルで取得している。これらはいずれも特定分野での深い専門性を持つ企業だ。
日本の投資家にとって、この動きは何を意味するのか。国内でも富士通やNECなどの老舗IT企業が、長年培った業界知識とAI技術の組み合わせで新たな価値創造を模索している。また、キーエンスのような製造業向けソフトウェア企業は、まさにブラボ氏が言う「ドメイン専門性」の典型例と言えるだろう。
compare-table
| 要素 | 従来の評価基準 | 新たな評価基準 |
|---|---|---|
| 重視指標 | 売上成長率 | 利益率・専門性 |
| 投資対象 | 成長企業全般 | ドメイン特化企業 |
| AI影響 | 脅威として認識 | 差別化要因として活用 |
| 時間軸 | 短期成長 | 長期蓄積価値 |
日本企業への示唆
この市場環境の変化は、日本企業にとって追い風となる可能性がある。日本企業の多くは、特定業界での長期的な関係構築と専門知識の蓄積を得意としてきた。製造業、金融、物流など、各分野で培った知見をソフトウェア化し、AI技術と組み合わせることで、グローバル市場での競争力を高められるかもしれない。
一方で、課題もある。日本のソフトウェア企業の多くは、まだ売上規模や国際展開の面でグローバル企業に劣る。Thoma Bravoのような大型ファンドの投資対象となるには、より大きなスケールと明確な成長戦略が必要だろう。
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