エヌビディアとOpenAI、1000億ドル契約が宙に浮く理由
AI業界の巨人2社による歴史的契約が5カ月間進展なし。両社の微妙な関係の裏にある戦略的思惑とは
1000億ドル。この途方もない金額の契約が、5カ月間も宙に浮いている。
昨年9月、AI業界の頂点に立つエヌビディアとOpenAIが発表した歴史的な投資協定は、いまだに署名されていない。それどころか、両社の関係に亀裂が生じているとの報道も浮上している。
契約の中身と現状
この協定はOpenAIが10ギガワットの電力を要するインフラ構築を進め、エヌビディアが段階的に投資するというものだった。第1段階として1ギガワット完成時にエヌビディアが100億ドルを投資し、全体で1000億ドル規模になる予定だった。
エヌビディアのジェンセン・ファン最高経営責任者(CEO)は今週、「ドラマはない」と関係の良好さを強調。OpenAIのサム・アルトマンCEOも「この騒ぎがどこから来るのか分からない」とX(旧ツイッター)で反論した。
しかし現実は異なる。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、エヌビディア社内ではOpenAIのビジネスモデルへの疑問が浮上し、交渉は「凍結状態」だという。
10年間の蜜月関係に変化
両社の関係は10年にわたる。2016年、まだ無名の非営利研究所だったOpenAIは、エヌビディア初のAIシステム「DGX」を使いたがった最初の組織だった。
ChatGPTリリース後の2023年2月、ファンCEOは決算説明会でOpenAIを絶賛し、「ソフトウェア開発者は皆、ChatGPTのようなものの統合に取り組んでいる」と興奮気味に語った。実際、ChatGPTリリース四半期に60億ドルだったエヌビディアの売上高は、直近四半期には570億ドルと約10倍に急拡大した。
だが成功が皮肉にも両社を競合関係に押し込んでいる。
互いの競合への接近
エヌビディアは顧客集中リスクを避けるため、11月にAnthropicに100億ドル投資するなど、他のAI企業への出資を拡大している。
一方OpenAIも、6月にAMDのリサ・スーCEOと共同イベントに登場し、次世代AIチップ開発への協力を表明。10月にはブロードコム、先月には新興企業Cerebrasとの100億ドル超の契約も発表した。
OpenAI幹部は「エヌビディアだけでは必要な計算能力を賄えない」と説明するが、エヌビディアにとっては重要顧客の分散を意味する。
日本企業への示唆
この状況は日本の技術企業にとって重要な教訓を含んでいる。ソニーやトヨタ、任天堂など、AI活用を進める日本企業も、特定のチップメーカーへの依存リスクを考慮する必要がある。
エヌビディアの市場シェアは90%超だが、供給安定性や価格交渉力の観点から、複数のサプライヤーとの関係構築が不可欠だろう。日本企業の慎重な調達戦略が、むしろ競争優位につながる可能性もある。
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