デジタル資産国庫の「ギャンブル時代」が終わる理由
暗号資産を企業財務に組み入れるDAT戦略が転換期を迎えている。単純な「買って保有」から、ガバナンス重視の成熟したアプローチへの変化を解説。
50億ドル以上の資金調達を監督してきた証券弁護士が警告する:「デジタル資産国庫(DAT)の『簡単な金儲け』時代は終わった」。
2026年、企業の暗号資産投資戦略は大きな転換点を迎えている。かつてウォール街の注目を集めた「ビットコインを買えば株価が上がる」という魔法は、もはや通用しない。AVAX OneのCEOを務めるジョリー・カーン氏は、この変化を「誇大宣伝が剥がれ落ちた現実の到来」と表現する。
「盲目的購入」の終焉
従来のDAT戦略は驚くほど単純だった。資金を調達し、暗号資産を蓄積し、価格上昇を祈る。しかし、この手法は本質的に「株主価値を使ったギャンブル」に他ならない。
問題の核心は、多くの上場企業が「規制されていないヘッジファンド」に変貌しようとしていることだ。しかも、ファンドとしてのリスク管理体制も、上場企業としてのガバナンス基準も欠いている。MARA Holdingsが60億ドルの評価額に達した際の法務責任者として、カーン氏はこの現実を目の当たりにしてきた。
年次報告書の提出期限が迫る中、これらの企業は自らの戦略を問い直さざるを得ない状況に追い込まれている。投資家たちは「暗号資産を信じている」という曖昧な説明にもはや満足しない。彼らが求めているのは、具体的なリスク管理策と明確な戦略的根拠だ。
日本企業への示唆
日本の大手企業は、この変化を注意深く観察している。ソニーや任天堂のような技術系企業は、デジタル資産への投資を検討する際、より慎重なアプローチを取る可能性が高い。日本企業の伝統的な長期投資志向は、実はこの新しいDAT戦略と親和性が高いかもしれない。
特に注目すべきは、ガバナンス重視の姿勢だ。AVAX Oneが株主の96%の承認を得てデジタル資産戦略を実行した事例は、日本企業の意思決定プロセスと類似している。株主との対話を重視し、透明性を確保する文化は、まさに成熟したDAT戦略に求められる要素だ。
規制という「盾」の価値
多くの暗号資産業界関係者が規制を障害と見なす中、カーン氏は異なる視点を提示する。SEC(米証券取引委員会)の開示義務は、株主を暗号資産市場の最悪の事態から守る「必要かつ歓迎すべき盾」だというのだ。
この考え方は、規制環境の整備を重視する日本の金融当局の姿勢とも合致する。金融庁が暗号資産交換業者に厳格な規制を課している背景には、投資家保護と市場の健全性確保がある。同様に、企業のDAT戦略においても、規制遵守は競争優位性の源泉となり得る。
新世代DAT戦略の特徴
成功する次世代DAT企業は、以下の特徴を備えている:
透明性のある意思決定プロセス:なぜ特定の資産を選択するのか、流動性をどう管理するのかを明確に説明する。
包括的なリスク評価:一般的な「ボイラープレート」リスク要因ではなく、保有する特定資産の固有リスクを詳細に分析する。
多様な収益源:資産価格上昇以外の収益源を確保し、「クリプト冬」でも事業継続できる体制を構築する。
株主との対話:重要な戦略変更について株主の明示的な承認を求める。
これらの要素は、日本企業が長年培ってきた経営哲学と多くの共通点を持つ。持続可能な成長、ステークホルダーとの対話、リスク管理の重視といった価値観は、まさに成熟したDAT戦略に不可欠な要素だ。
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