EU自動車の原産地規制が招く「友敵問わぬ」反発
EU域内製造を義務付ける新規制で、英国や韓国など友好国も対象に。日本企業にも影響必至の保護主義政策を解説
2026年から施行予定のEU新規制が、自動車業界に波紋を広げている。EU域内で販売される自動車の60%以上をEU内で製造することを義務付ける「Made in EU」規制だ。問題は、この規制が中国を狙い撃ちしたものでありながら、英国や韓国など従来の友好国も巻き込んでしまうことにある。
規制の狙いと実態
EU当局は中国製電気自動車の急速な市場拡大を警戒している。中国のBYDや上汽集団などが、政府補助金を背景に欧州市場でシェアを伸ばしていることが背景にある。新規制では、EU域外で製造された自動車には最大38%の追加関税を課す方針だ。
しかし、この「域内製造義務」は予想外の副作用を生んでいる。Brexit後にEU域外となった英国で製造されるジャガーやランドローバーも対象となり、韓国の現代自動車や起亜も同様に影響を受ける。日本企業では、英国に製造拠点を持つ日産のサンダーランド工場が直撃を受ける可能性が高い。
友好国からの反発
英国政府は「不公平な貿易障壁」として強く反発している。英国自動車工業会は、同規制により英国からEUへの自動車輸出が年間15億ポンド減少する可能性があると試算している。
韓国も同様に懸念を表明した。韓国の通商産業資源部は「WTO規則に反する差別的措置」として、法的対応も辞さない構えを見せている。特に現代自動車は、チェコ工場の拡張計画を前倒しで進める方針を発表するなど、対応に追われている。
日本企業への影響
日本の自動車メーカーにとっても他人事ではない。トヨタは英国のバーナストン工場で製造する車両の一部がEU市場向けとなっており、規制の影響を受ける可能性がある。ホンダは既に英国工場を閉鎖したが、トルコ工場からの輸出戦略の見直しを迫られている。
日産は最も深刻な影響を受ける日本企業の一つだ。サンダーランド工場は年間約40万台を生産し、その大部分がEU向けに輸出されている。同社は既にEU域内での新たな製造拠点確保に向けた検討を開始したと報じられている。
保護主義の代償
EUの新規制は、表面上は中国の「不公正貿易」に対する防御策として位置づけられている。しかし実際には、長年の貿易パートナーである英国、韓国、日本企業も巻き込む結果となった。
経済学者の間では、この規制が「友敵無差別の保護主義」として批判されている。ブリュッセルのシンクタンク、欧州政策研究センターの分析によると、同規制により EU域内の自動車価格は平均8%上昇し、消費者負担が増加する可能性が高いという。
一方で、EU域内の自動車メーカーは規制を歓迎している。フォルクスワーゲンやステランティスなどは、中国企業との競争で不利な立場に置かれていたため、「公平な競争環境の回復」として評価している。
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