香港、仮想通貨ハブの座をUAEに奪われる危機感
香港の金融当局者が認めた「UAEの積極攻勢」。アジア最大の金融センターが直面する仮想通貨規制競争の現実とは。
香港財政司のジョセフ・チャン次官が壇上で語った言葉は、率直すぎるほどだった。「UAEは本当にアグレッシブです」。アジア最大の金融センターのひとつである香港の政府高官が、中東の新興金融ハブに対してここまで明確な危機感を示すのは異例のことだ。
「予測可能性」vs「スピード」の戦い
Consensus Hong Kong 2026で開催されたパネルディスカッションで、香港当局者と業界関係者が口を揃えて認めたのは、ドバイとアブダビが確立した仮想通貨規制の優位性だった。
Johnny Ng氏(web3投資会社Goldford Group創設者、中国人民政治協商会議全国委員会委員)は、UAEの成功要因を明確に分析した。「ドバイとアブダビは、仮想通貨に特化した単一の規制当局を設置し、包括的な規制フレームワークを構築した。韓国も同様に、数百万人の仮想通貨ユーザーを抱える中で、専門の政府機関を設置している」。
一方、香港が誇るのは「サプライズのない」規制アプローチだ。チャン次官は強調する。「我々の規制は透明で確実、予測可能です。仮想通貨の冬の時代でも、香港はデジタル資産業界の発展を支持し続けてきました。他の管轄区域のように、状況に応じて方針を二転三転させることはありません」。
数字が語る現実
香港の仮想通貨取引プラットフォーム(VATP)強制ライセンス制度は2年半前に施行され、現在11社がライセンスを取得している。昨年8月に開始されたステーブルコイン規制制度では、第一陣のライセンス交付が今年第1四半期に予定されている。
しかし、この数字は香港の慎重なアプローチを物語る一方で、スピードを重視する市場からは「遅い」と見られる可能性もある。デジタル資産ディーラーとカストディアンのライセンス制度は今年後半にようやく提案される予定だ。
アジアの仮想通貨ハブ競争
興味深いのは、Ng氏が韓国を成功事例として挙げた点だ。「香港の立法会は政府により多くのことを推奨できる。特に、これらすべてを監督する単一のポジションを創設することによって」。彼は立法者として、韓国の議員との連携も進める意向を示した。
この発言は、香港が直面する構造的課題を浮き彫りにする。複数の規制機関にまたがる現在のシステムでは、UAEや韓国のような一元化された意思決定の速度に対抗するのは困難だ。
日本の視点から見ると、この競争は他人事ではない。金融庁も仮想通貨規制で世界をリードしてきたが、シンガポール、UAEといった新興ハブの台頭により、アジア太平洋地域での影響力維持が課題となっている。
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