「嵐の後の相場」— 今、何を買い、何を手放すべきか
中東戦争後の急回復を経て、米国の著名投資クラブが全保有銘柄を総点検。テック大手から製薬、小売まで、投資家が今考えるべき問いとは。
「嵐の中で売った人は、晴れ間を見ることができなかった。」
2026年4月17日、米国の著名投資番組「CNBCインベスティング・クラブ」が月次ミーティングを開催しました。タイミングは絶妙でした。前日、S&P500指数が1月下旬以来初めて史上最高値を更新したばかり。イランとの戦争を発端とした売り相場からの劇的な回復を、市場が印象づけた翌日のことです。
司会のジム・クレイマーと、ポートフォリオ分析ディレクターのジェフ・マークスは、保有全銘柄を一つひとつ点検しました。その内容は、単なる「買い推奨リスト」ではありません。後悔、忍耐、そして判断の難しさが滲み出る、投資の現実を映した記録です。
「あの時売らなくてよかった」— 回復相場が教えること
3月27日の前回ミーティングの翌営業日、相場はさらに一段下落しました。しかしその後は「ひたすら上昇」が続いたと、クレイマーは振り返ります。戦争は公式には終わっていない。それでも市場は、地政学リスクから企業業績へと視線を移し始めています。第1四半期の決算シーズンが本格化する中、投資家の関心は「次の決算で何が明らかになるか」に集まっています。
この急回復が示す教訓は一つです。パニック売りのコストは、想像以上に高い。 戦争勃発時に売却した投資家は、その後の上昇を丸ごと逃したことになります。
テック大手:「保有継続」の根拠
Appleについては、中国でのスマートフォン需要の回復が続いており、GoogleのGeminiAIを搭載した新しいSiriとの組み合わせが競争優位をもたらすと評価しています。折りたたみ式iPhoneの発売も控えており、「売る理由がない」と断言しています。
Amazonは「皇帝は最初から服を着ていた」という表現が印象的です。クラウド部門AWSの強さと小売事業の底堅さを市場が認識するのに時間がかかっただけで、ビジネスの本質は変わっていなかった、という評価です。衛星通信事業への野心も注視しています。
Nvidiaについては、「世界はコンピューティング能力が不足している」という見立てを維持。ハイパースケーラー各社が自社開発チップを進める中でも、Nvidiaが依然として最高水準にあるという判断です。一方、Broadcomは株価が急騰しすぎたとして、今週2回にわたりポジションを削減。売却の理由は業績への懸念ではなく、純粋に「上がりすぎた」という価格判断です。
Microsoftには珍しく注文をつけています。OpenAIやAnthropicに対してAIツールの開発で後れを取っており、Azureクラウドへの計算資源の配分を増やすべきだという指摘です。Alphabet(Google)については、一度売却して後悔し、昨年末に買い戻した経緯があります。クラウド、YouTube、検索、そして自動運転タクシーWaymoまで、「この市場で最も多くの勝ち筋を持つ企業」と高く評価しています。
日本市場への視点:見えにくい連鎖
このポートフォリオは米国株中心ですが、日本の投資家にとって無関係ではありません。
まず、NvidiaやBroadcomが牽引するAI半導体の需要拡大は、東京エレクトロンや信越化学工業など、半導体製造装置・素材メーカーに直接恩恵をもたらします。また、データセンター向け電力設備を手がけるEatonや、ガスタービンのGE Vernovaが注目されているという事実は、国内でも三菱電機や日立製作所の関連事業への関心を高める材料です。
Appleの中国販売回復は、サプライチェーンを通じて村田製作所やTDKなどの部品メーカーにも波及します。「米国の大型テック株の話」は、実は日本の製造業の受注動向と地続きです。
一方、Nikeについては「買い増しは間違いだった」と率直に認めています。CEO交代後のターンアラウンドが想定より困難であり、次の四半期決算が「最後の審判」になるとしています。日本市場でもNike製品は広く浸透していますが、ブランドの回復力は消費者と投資家で評価が異なることを改めて示しています。
「忍耐」と「見切り」の境界線
Home Depotは「金利が下がれば住宅市場が動く」という前提で保有を続けていますが、「もし5銘柄しか持てないなら、もっと良い選択肢がある」と正直に述べています。Wells Fargoは2四半期連続の不振で「ペナルティボックス入り」。Doverは業績は悪くないが株価が動かず、「売却候補」として名前が挙がっています。
対照的に、Cardinal Health(医薬品流通)は「ポートフォリオ全体で今最も買いたい銘柄」と明言。Eli LillyのGLP-1(肥満・糖尿病治療薬)事業については、競合のNovo Nordiskとの戦いを「製造能力の戦い」と位置づけ、Lillyが優位にあると見ています。
Honeywellは航空宇宙部門のスピンオフが数ヶ月後に迫っており、「スピンオフ後の航空宇宙単体の価値が、現在の会社全体の時価総額約1,500億ドルを超える可能性がある」という興味深い評価をしています。
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