米暗号資産規制法案、党派対立で前進も課題山積
米上院農業委員会が暗号資産市場構造法案を可決したが、民主党の支持を失い党派対立が深刻化。ステーブルコイン報酬を巡る銀行業界との対立が焦点に。
2月末まで。これが、米国の暗号資産業界と銀行業界に与えられた妥協案合意の期限だ。トランプ大統領の暗号資産アドバイザーであるパトリック・ウィット氏が設定したこの締切は、業界の未来を左右する重要な分水嶺となりそうだ。
党派対立で進む法案、失われた超党派支持
1月29日、米上院農業委員会は暗号資産市場構造法案を党派投票で可決した。しかし、この「前進」には大きな代償が伴った。昨年11月まで法案作成に協力していた民主党のコリー・ブッカー上院議員が支持を撤回したのだ。
委員会のジョン・ブーズマン委員長(共和党)は、「委員会通過により勢いを示せた」と語るが、現実はより複雑だ。ブッカー議員は公聴会で、トランプ大統領が「暗号資産で金儲けしている」ことを「ばかげている」と批判し、法案への反対理由の一つに挙げた。
民主党が提案した修正案は全て否決された。その中には、大統領を含む公職者の暗号資産業界への関与禁止、暗号資産ATM詐欺対策、外国の敵対勢力によるデジタル商品への関与規制などが含まれていた。
ステーブルコイン報酬が最大の争点
業界関係者によると、今週行われたホワイトハウス主導の会議で最も議論されたのは、ステーブルコイン報酬の扱いだった。暗号資産企業はユーザーにステーブルコイン保有の報酬を提供したいが、銀行業界はこれが利息支払いに類似しているとして反対している。
コインベースのブライアン・アームストロング最高経営責任者(CEO)は、「ステーブルコインの報酬を殺し、銀行が競合を禁止できる」修正案があることを理由に、上院銀行委員会の法案に反対を表明している。
ブーズマン委員長は、この問題を「重要な争点」と認めながらも、「両業界の懸念は正当」だとし、「双方が受け入れられる妥協案を見つける」と述べた。しかし、会議に参加した暗号資産業界関係者は、一部の銀行が妥協に消極的だったと感じたという。
日本への波及効果と課題
米国の規制枠組みは、日本の暗号資産市場にも大きな影響を与える可能性がある。日本は既に世界で最も厳格な暗号資産規制の一つを持つが、米国の動向は国際的な基準設定において重要な意味を持つ。
特に、ステーブルコイン規制については、日本も2023年6月から独自の法的枠組みを導入している。米国での議論の行方は、日本企業の海外展開戦略や、国際的な競争力に影響を与えるだろう。
SBIホールディングスや楽天など、暗号資産事業を展開する日本企業にとって、米国市場でのビジネスモデルが制限される可能性もある。一方で、厳格な規制環境に慣れた日本企業にとっては、コンプライアンス面での競争優位性を発揮する機会にもなり得る。
次のステップと不確実性
法案の次の関門は上院銀行委員会だが、1月15日に予定されていた公聴会は暗号資産業界の反対により土壇場で延期された。ブーズマン委員長は「今年中」の上院合意を目指すとしているが、党派対立の深刻化により道のりは険しい。
興味深いことに、この法案は昨年夏に下院を通過した超党派のCLARITY Actを基盤としている。下院では超党派支持を得られた内容が、上院では党派対立の火種となっている現実は、米国政治の複雑さを物語っている。
関連記事
ドイツ大手資産運用会社のデジタル資産責任者が「USDTとUSDCはステーブルコインではない」と発言。その真意と、暗号資産市場・規制・投資家への影響を多角的に読み解きます。
2020年のDeFiブームで誕生した分散型保険プロトコルは、ハッキングの進化とユーザーの利回り優先志向によって崩壊した。その構造的失敗から何を学べるか。
アーカム・インテリジェンスのデータによると、ブータンに帰属するウォレットから過去1年間で10億ドル超のビットコインが流出。しかし同国政府は「売却していない」と主張する。この矛盾が示す国家暗号資産戦略の深層とは。
JPモルガンがEthereumベースのトークン化マネーマーケットファンド「JLTXX」をSECに申請。ブラックロックに続くウォール街の動きが、日本の金融機関にも示す意味を読み解く。
意見
この記事についてあなたの考えを共有してください
ログインして会話に参加