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コカインが帰ってきた――次の薬物危機は始まっている
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コカインが帰ってきた――次の薬物危機は始まっている

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米国でオピオイド死者数が減少する一方、コカインとメスアンフェタミンによる過剰摂取死が急増。公衆衛生システムはこの「新しい古い危機」に対応できるのか。日本社会への示唆も含めて考える。

オピオイド危機がようやく「峠を越えた」と言われた矢先、別の波が静かに押し寄せていた。

米国でコカインによる過剰摂取死は、2016年の1万375件から2023年には2万9,449件へと、わずか7年で約3倍に膨らんだ。メスアンフェタミン(覚醒剤の一種)も同様で、2017年の9,438件から2023年には3万3,283件へと急増している。皮肉なことに、これらの数字はオピオイド系薬物による死者数が減少傾向に転じた時期と、ほぼ重なっている。

薬物問題は「解決」するのではなく、「変容」する。米国社会が今、改めてそのことを突きつけられている。

1980年代の亡霊と、新しい現実

コカインが「社会問題」として大きくクローズアップされたのは、1980年代のレーガン政権時代だった。「ジャスト・セイ・ノー(ただノーと言え)」というスローガンに象徴される厳罰主義的なアプローチが採られ、その後コカインとメスアンフェタミンの使用は一時的に減少した。2000年代に入るとオピオイド系鎮痛剤の過剰処方が新たな危機を生み出し、公衆衛生の資源と関心はそちらへ集中していった。

ところが2010年代半ばから、スタンフォード大学精神科・行動科学のキース・ハンフリーズ教授らの専門家が警鐘を鳴らし始めた。コカインとメスアンフェタミンが再び存在感を増してきたのだ。背景には、メキシコの麻薬カルテルによる生産の高度化がある。メスアンフェタミンは過去10年で純度と効力が大幅に上がり、より危険な薬物へと変貌を遂げた。

さらに事態を複雑にしているのが、薬物の「混合使用」という新しいパターンだ。UCLAバーモント大学の依存症研究者リチャード・ローソン氏によれば、現在の薬物使用者を「ヘロイン依存者」「コカイン依存者」と単純に分類することはもはや実態を反映していない。使用者の中には、フェンタニル(強力な合成オピオイド)の「うとうと感」を打ち消すためにコカインを使ったり、逆にオピオイド離脱症状の苦痛を和らげるためにメスアンフェタミンを用いたりするケースが確認されている。また、コカインとして売られている薬物にフェンタニルが混入していた事例も報告されており、オピオイドへの耐性がない使用者が致死量を摂取してしまうリスクも高まっている。

「ナルカン」がない世界

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オピオイド危機への対応において、米国は一定の成果を上げた。メサドンブプレノルフィンといった薬物補助療法が普及し、過剰摂取時にはナロキソン(ナルカン)の鼻腔スプレー一本で命を救えるようになった。プライマリケア医や救急隊員、そして当事者自身がこれらのツールを手にできるよう、制度的な整備も進んだ。

しかし、コカインやメスアンフェタミンの依存症には、これに相当するものが存在しない。

「コカインにもメスアンフェタミンにも、有効な薬物療法はありません。あらゆる可能性が試されてきましたが、何も効果がなかった」と、ハンフリーズ教授は断言する。

現時点で最も有効性が示されているのは「コンティンジェンシー・マネジメント(随伴性マネジメント)」と呼ばれる行動療法だ。簡単に言えば、薬物を使用しなかった場合に報酬(ギフトカードなど)を与えるインセンティブ制度である。カリフォルニア州は2021年に試験的プログラムの承認を受け、すでに1万人以上が利用。従来の行動療法と比べて治療継続率が高く、陰性反応(薬物不使用)の割合も改善されているという。

ただし、この手法には根強い反発もある。「薬物使用者に報酬を与えること」への道徳的な抵抗感が、政策立案者や医師の間にも存在するのだ。メディケイドや民間保険によるカバーも限定的で、全国規模での展開にはほど遠い現状がある。

一方、過剰摂取時の対応についても課題は大きい。興奮剤の過剰摂取症状はオピオイドのそれとは異なり、動悸、体温上昇、幻覚、光・音への過敏などが現れる。ニューヨーク市の薬物過剰摂取防止団体「OnPoint NYC」の責任者ピア・マーカス氏は、「照明を落とし、音を遮断し、体を冷やし、穏やかに声をかけること」を推奨する。ナロキソンのような「一発逆転」の手段はなく、対処はより繊細で状況依存的だ。

日本社会への問い

日本においても、薬物問題は決して「対岸の火事」ではない。覚醒剤(メスアンフェタミンの一種)は戦後から現在に至るまで、日本で最も多く摘発される薬物であり続けている。厚生労働省の統計によれば、覚醒剤事犯の検挙者数は近年やや減少傾向にあるものの、依然として年間数千人規模で推移している。さらに近年は、大麻の使用が若年層を中心に拡大していることも報告されており、薬物問題の「多様化」という点では米国と類似した構造変化が起きつつある。

米国のオピオイド危機が示したのは、薬物問題を「道徳の問題」として扱い、厳罰と排除で対応しようとするアプローチの限界だった。治療と回復を医療・公衆衛生の問題として捉え直す転換が、死者数減少につながった。日本の依存症治療の体制は、依然として専門クリニックへのアクセスが中心であり、プライマリケアへの統合は途上にある。

また、日本社会特有の「恥の文化」や「自己責任論」が、依存症を抱える人々の助けを求める行動を妨げている可能性も、専門家たちは指摘している。治療へのアクセスを広げることと同時に、依存症を「意志の弱さ」ではなく「脳の疾患」として理解する社会的認識の変化も、問われている。

本コンテンツはAIが原文記事を基に要約・分析したものです。正確性に努めていますが、誤りがある可能性があります。原文の確認をお勧めします。

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