英首相の中国訪問、「成果なし」批判の裏に見える新たな関係構築の兆し
スターマー英首相の中国訪問は具体的な合意なしに終わったが、分析家は二国間関係の基盤作りが始まったと指摘。英中関係の今後を探る。
150億ドルのアストラゼネカ投資発表の陰で、ケア・スターマー英首相の中国訪問は「手ぶら帰国」との厳しい批判にさらされている。しかし専門家たちは、この訪問が英中関係の新たな章の始まりを告げているとの見方を示している。
批判の嵐に見舞われた歴史的訪問
野党からの激しい批判、メディアの冷ややかな報道。スターマー首相が紫禁城を一般観光客と同じように見学する姿は、英国の威信失墜の象徴として報じられた。確かに目立った二国間合意は発表されず、貿易協定や投資パッケージといった具体的な成果物は持ち帰れなかった。
野党保守党は「外交的な失敗」と断じ、労働党政権の対中政策の一貫性を疑問視している。特に、前政権が掲げた「中国に対する慎重なアプローチ」からの方針転換について、明確な説明を求める声が高まっている。
水面下で進む関係修復の兆候
一方で国際関係の専門家たちは、表面的な批判とは異なる視点を提示している。今回の訪問は、2018年以来途絶えていた英中首脳レベルでの対話再開という重要な意味を持つ。習近平主席との会談では、気候変動対策や金融サービス分野での協力可能性が議論されたとされる。
アストラゼネカの150億ドル中国投資計画の発表は、偶然のタイミングではない。英国企業にとって中国市場の重要性は増しており、政治的な緊張とは別次元で経済関係は深化している。製薬業界だけでなく、金融、エネルギー分野でも英国企業の中国進出が加速している。
日本への示唆:アジア戦略の再考
スターマー首相の中国訪問は、日本の対中戦略にも重要な示唆を与えている。英国が中国との関係改善に舵を切る中、日本は米国との同盟関係を維持しながら、どのように中国との経済関係をバランスさせるかという課題に直面している。
特にトヨタやソニーなど、中国市場に大きく依存する日本企業にとって、英国の動向は注目すべき前例となる。英国が示す「政治と経済の分離」アプローチが成功すれば、日本企業の中国戦略にも影響を与える可能性がある。
不透明な未来への布石
今回の訪問で最も注目すべきは、両国が今後の関係構築に向けた「プロセス」を開始したことだ。具体的な成果がなかったことを批判する声もあるが、外交関係の修復は一朝一夕には成し遂げられない。
スターマー政権は、前政権の対中強硬路線から実用主義的なアプローチへの転換を図っている。これは英国経済の現実的な必要性に基づく判断でもある。中国は英国にとって第3位の貿易相手国であり、この関係を完全に断ち切ることは経済的に非現実的だ。
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