危機の後、ビットコインは金を超えるのか
ブラジルの暗号資産取引所Mercado Bitcoinの研究によると、世界的な危機後60日間でビットコインは金やS&P500を上回るパフォーマンスを示すことが分かりました。投資家にとっての意味を考えます。
「有事の金」という常識は、もう古いのかもしれません。
世界が揺れるたびに、投資家は反射的に金へと資金を移してきました。しかし、あるデータが静かにその前提を問い直しています。ブラジル最大の暗号資産取引所であるMercado Bitcoinの調査によると、主要な経済・地政学的ショックの後、60日間でビットコインは金とS&P500の両方を一貫して上回るパフォーマンスを見せているというのです。
数字が語るパターン
調査を率いたのは、Mercado Bitcoinのリサーチ責任者であるRony Szuster氏です。同氏のチームは、COVID-19パンデミックの発生やトランプ政権による大規模関税発動など、複数の歴史的ショックを対象に、その後60日間の資産パフォーマンスを分析しました。
結果は一貫していました。2025年4月、トランプ政権が包括的な関税を発表した後の60日間で、ビットコインは24%上昇しました。同じ期間に金は8%、S&P500はわずか4%の上昇にとどまりました。2020年3月のパンデミック初期においても、ビットコインは21%の上昇を記録し、他の資産を引き離しています。
現在進行中の米国・イラン間の緊張においても、このパターンは繰り返されているとSzuster氏は指摘します。記事執筆時点で、ビットコインは$65,800から$67,300へと2.2%上昇している一方、金は11%下落し、S&P500は4.4%下げて2022年以来最大の月間下落幅を記録しています。
ただし、Szuster氏は重要な注意点を付け加えています。危機の直後にビットコインを評価することは誤解を招きやすいと言います。「映画の最初の数分を見て、結末を知ったと思うようなものです」と彼は述べています。危機の初動では、投資家はリスク削減や現金確保のために保有資産を売却するため、ビットコインを含む防衛的な資産でさえ一時的に下落することがあります。重要なのは、その後の回復力だということです。
「デジタルゴールド」論の現在地
ビットコインが「デジタルゴールド」と呼ばれるようになって久しいですが、この研究はその議論に新たな次元を加えます。過去10年間で最もパフォーマンスの高い資産だったというSzuster氏の主張は、長期投資の観点からビットコインを再評価する機会を与えてくれます。
しかし、ここで立ち止まって考える必要があります。日本の投資家や金融機関にとって、この議論はどのような意味を持つのでしょうか。
日本は長らく金融保守主義の国として知られてきました。日本銀行の超低金利政策が続く中、個人投資家は円建ての資産に偏りがちです。一方で、SBI HoldingsやMonex Groupなどの国内金融機関は暗号資産ビジネスへの参入を進めており、機関投資家レベルでのビットコインへの関心も静かに高まっています。2024年には米国でビットコイン現物ETFが承認され、日本市場への波及効果も議論されています。
また、円安が続く局面では、ドル建て資産としてのビットコインは日本の投資家にとって為替ヘッジの側面も持ちます。「有事の円」という概念が揺らいでいる現在、資産分散の選択肢としてビットコインを検討する動きは、決して非現実的ではありません。
見逃せないリスクの非対称性
もちろん、楽観的な数字だけを見ることは危険です。ビットコインのボラティリティは金の比ではありません。危機の初動で30〜50%の急落を経験することも珍しくなく、その回復を待てる投資家と待てない投資家では、まったく異なる結果をもたらします。
機関投資家の視点からは、規制リスクも無視できません。各国の暗号資産規制は現在も流動的であり、日本においても金融庁の方針が投資環境に直接影響します。さらに、今回の調査はMercado Bitcoinという暗号資産取引所が実施したものであり、その利益相反の可能性についても冷静に考慮する必要があります。
一方、伝統的な金融機関の視点からすれば、ビットコインが「安全資産」として機能するという主張には、まだ懐疑的な見方が根強くあります。60日間という時間軸での比較は、長期的な資産保全という金本来の役割とは異なる評価軸であるとも言えます。
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