トランプは「嘘の発信者」か、それとも「嘘の受信者」か
トランプ大統領は深夜にTruth Socialで陰謀論を大量リポスト。20世紀型の権威主義的プロパガンダとは異なる、SNSに依存する新しい権力者像を分析する。
権威主義的指導者は「嘘を操る者」だと、20世紀の歴史は教えてきました。しかし今、ホワイトハウスにいる人物は、嘘を操るのではなく、嘘に操られているかもしれません。
深夜の「クラッシュアウト」——38分間に25件以上の投稿
2026年5月11日の夜10時15分から10時53分にかけて、ドナルド・トランプ大統領はTruth Socialに25件以上の投稿を立て続けにリポストしました。わずか38分間の出来事です。
その内容は多岐にわたりました。約半数はバラク・オバマ前大統領への攻撃で、「反逆罪を犯した」「クーデターを企てた」「ヒラリー・クリントンのメールサーバーを偽名で使用した」「医療保険制度改革(ACA)から1億2000万ドルを個人的に受け取った」などの主張が並びました。このACA疑惑は、後に風刺サイトを出所とするものだったことが判明しています。
残りの投稿には、マーク・ケリー、ジェームズ・コミー、ジャック・スミスといった人物への逮捕要求、司法省への迅速な対応を求める声、そして黒人が公共の場で問題行動をとる様子を映したとされる動画が含まれていました。
注目すべき点は、これらの投稿のうちトランプ自身が書いたものはたった1件だったということです。残りはすべて、@Shelley2021、@YouWishUwere4US、@Real_RobNといった一般のSNSユーザーの投稿のリポストでした。
「ビッグ・ブラザー」との決定的な違い
20世紀型の権威主義的指導者像——ジョージ・オーウェルの『1984年』に登場する「ビッグ・ブラザー」や、スターリンのような人物——は、プロパガンダを精巧に設計して民衆に注入する「送信者」でした。国家機構を使って情報を管理し、現実を書き換えるのが彼らの手法です。
トランプもその側面を持っています。メディアや企業への圧力、司法機関の私物化、自身の名を冠した建造物へのこだわりは、その典型的な表れです。しかし決定的に異なる点があります。彼はプロパガンダの発信者であると同時に、受信者でもあるのです。
深夜の投稿パターンが示すのは、トランプがSNSを「権力の拡声器」として使うのではなく、「孤独な夜の慰め」として使っているという実態です。匿名のフォロワーたちが作り上げたフィクションを読み込み、それを現実の政策に変換しようとする——このプロセスは、20世紀の独裁者とは根本的に異なる権力のあり方を示しています。
アメリカの政治評論家トム・ニコルズは、このパターンを「落ち込んだ10代の若者がSNSを使う方法」と表現しています。承認欲求を満たし、外の世界の恐ろしい現実から逃げるための空間——それがトランプにとってのTruth Socialだという分析です。
なぜ今、これが重要なのか
この深夜の投稿騒動が起きた同じ時期、トランプ政権はイランとの緊張状態を抱えており、その経済的影響は共和党にとっての最大の政治的負債になりつつあります。しかし、25件以上の投稿の中にイラン問題への言及はほぼありませんでした。
この「無視」は偶然ではないかもしれません。SNSの世界では、現実の複雑な問題よりも、陰謀論や敵への怒りの方が心理的な「報酬」をもたらしやすいことが、多くの研究で示されています。指導者が政策の現実から目を背け、SNSの反響空間に逃げ込むとき、その国の意思決定はどうなるのでしょうか。
日本にとってこの問題は決して対岸の火事ではありません。トランプ政権の政策決定が、匿名のSNSユーザーの投稿に影響を受けているとすれば、日米関係や貿易交渉、安全保障の枠組みも、予測不可能な要素を常に抱えることになります。トヨタやソニーをはじめとする日本企業がアメリカ市場での戦略を立てる際、「ホワイトハウスの意思決定はどこから来るのか」という問いはますます重要になっています。
多様な視点から見る
トランプ支持者の立場からすれば、これらの投稿は「既存メディアが報じない真実を拡散している」と映るでしょう。主流メディアへの不信感が高まる中、SNSでの情報共有は「民衆の声を直接届ける手段」として正当化されます。
一方、民主主義の制度設計という観点からは、別の懸念が浮かびます。大統領が匿名アカウントの投稿を元に司法省に捜査を指示しようとするならば、それは法の支配ではなく「フィクションの支配」です。オバマ元大統領への疑惑がすべて根拠不明であることは、複数の事実確認機関が指摘しています。
文化的な文脈で見ると、日本社会では政治指導者の「品位」や「自制」が重視される傾向があります。深夜に匿名ユーザーの投稿を次々とリポストする首脳の姿は、日本の政治文化とは大きく異なる光景として映るかもしれません。しかし同時に、SNSが政治コミュニケーションを変容させているのは日本も例外ではなく、政治家とフォロワーの境界線が曖昧になりつつある現象は、程度の差こそあれ各国で観察されています。
本コンテンツはAIが原文記事を基に要約・分析したものです。正確性に努めていますが、誤りがある可能性があります。原文の確認をお勧めします。
関連記事
米国のガソリン価格が1ガロン4.50ドルを超える中、ガス税休止や原油市場、ジョーンズ法まで——価格を動かす本当の要因を、エネルギー経済学の視点から読み解きます。
米最高裁がルイジアナ州の黒人多数選挙区を違憲と判断。しかし新たな研究は、政治的ゲリマンダーにおいて人種データが党派データよりも信頼性の高い予測因子であることを示している。民主主義の公正性に何をもたらすのか。
トランプ大統領がイランとの戦争による燃料高騰対策としてガソリン税の一時停止を表明。しかし議会承認が必要で実現は不透明。日本のエネルギー政策にも示唆を与える米国の選択とは。
トランプ大統領が非公式に「次の共和党大統領候補」を側近に問い始めた。ヴァンス副大統領とルビオ国務長官、二人の「後継者候補」が示すアメリカ政治の深層とは。
意見
この記事についてあなたの考えを共有してください
ログインして会話に参加