ミサイルより先に尽きるのは「迎撃ミサイル」か
米国とイスラエルはイランのミサイル・ドローン攻撃を90%以上迎撃しているが、その代償は天文学的だ。パトリオットやTHAADの在庫枯渇が、中東を超えて世界の安全保障に波及する現実を読み解く。
戦争の勝敗を決めるのは、もはや「誰がより多くのミサイルを持っているか」ではないかもしれない。「誰が先に迎撃ミサイルを使い果たすか」という問いが、現代の戦場を支配しつつある。
数字が語る「コストの非対称性」
現在進行中の米国・イスラエル対イランの軍事衝突において、最も注目すべき数字の一つは24億ドルだ。開戦からわずか5日間で、米国が消費したパトリオット迎撃ミサイルの推定コストである。1発あたり約400万ドルのこのミサイルが、わずか5日で数百発使われた計算になる。
さらに深刻なのはTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)の状況だ。昨年6月の「12日間戦争」で米国は全保有数の約4分の1を使い切った。THAADの年間生産数はわずか11発。消費速度と生産速度の間には、埋めようのない溝がある。
一方、イランが大量に使用しているシャヘドドローンは、1機あたりのコストがTHAAD迎撃ミサイルの数百分の一に過ぎない。「ミサイル防衛をしている側は、そもそもコストカーブの悪い側にいる」と、ジェームズ・マーティン不拡散研究センターのサム・レア氏は指摘する。「これが、こうした戦争の現実だ」。
イランの「合理的な非合理性」
イランは明らかに「負けている」。IRGC(イラン革命防衛隊)のミサイル発射数は開戦以来90%減、ドローン発射は83%減。イスラエルはイランのミサイル発射台の約70%を破壊または地下に封じ込めたと推定している。死者数も、イラン側は1,200人以上を数えるのに対し、イランの攻撃による死者は米軍人7人を含む43人にとどまる。
しかしここで問うべき問いがある。イランの指導部は、本当に「勝利」を目指しているのだろうか。
ジョンズ・ホプキンス大学の国際関係論に「強制外交」という概念がある。軍事力で相手を打ち負かすのではなく、相手に「続けることのコスト」が「やめることのコスト」を上回ると認識させることで、行動変容を促す戦略だ。イランが狙っているのは、まさにこれだと多くの専門家は見ている。
ドバイの高級ホテル、アマゾンのデータセンター、ホルムズ海峡を通過する商船——イランが選ぶ標的は、軍事的合理性よりも経済的・心理的打撃を重視している。ガソリン価格の高騰、経済の動揺、世論の悪化。トランプ大統領が「泣いて降参するまで」と宣言した戦争を、イランは「トランプが折れるまで」の消耗戦へと変えようとしている。
韓国からの移送が示す「グローバルな連鎖」
この戦争の影響は、中東にとどまらない。
欧州当局者は、ウクライナ向けの迎撃ミサイルが中東に転用されていると指摘する。さらに、米国は北朝鮮が最新鋭艦からミサイル試射を行った同じ週に、韓国に配備していたTHAADシステムの一部を中東へ移送したと報じられている。朝鮮半島の防衛能力を削ってでも、中東の穴を埋めなければならない——この事実は、西側の迎撃ミサイル在庫がいかに逼迫しているかを如実に示している。
米国のシンクタンクアメリカン・エンタープライズ研究所の防衛アナリスト、マッケンジー・イーグレン氏はこう警告する。「何年もの間、すべての軍種が精密誘導兵器を補充速度をはるかに上回るペースで消費してきた」。トマホーク巡航ミサイルの在庫補充には数年かかる可能性があるという。
日本の安全保障への示唆
この問題は、日本にとって対岸の火事ではない。
日本は現在、北朝鮮の弾道ミサイルと中国の軍事的台頭に対応するため、PAC-3(パトリオット改良型)やイージス艦を中核とした多層ミサイル防衛システムを整備・強化している。2022年の防衛費増額決定以降、日本はミサイル防衛への投資を加速させているが、今回の中東での教訓は、その戦略の根本的な問いを突きつける。
年間生産数が限られた高価な迎撃ミサイルを積み上げることで、本当に「抑止」は成立するのか。あるいは、大量の低コスト兵器で飽和攻撃を仕掛けられた場合、どれほどの在庫があれば「十分」と言えるのか。
三菱重工業や川崎重工業といった日本の防衛産業も、この問いと無縁ではいられない。政府は国産ミサイルの開発・量産能力の強化を打ち出しているが、今回の中東での教訓——消費速度と生産速度の非対称性——は、投資の方向性を再考させる可能性がある。
本コンテンツはAIが原文記事を基に要約・分析したものです。正確性に努めていますが、誤りがある可能性があります。原文の確認をお勧めします。
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