ウォール街が「予測市場」に本気を出した理由
カルシやポリマーケットなど予測市場プラットフォームに、ナスダックやICEなど金融大手が続々参入。投機から金融インフラへ変貌しつつある予測市場の今を解説します。
「みんな、私たちが狂っていると言った。」
トレードウェブのグローバル市場共同責任者、トロイ・ディクソン氏がそう振り返るのは、つい最近のことです。同社が予測市場プラットフォームのカルシとの提携を発表した2025年2月、社内外の反応は懐疑的でした。ところが発表の翌日から、電話が鳴り止まなくなったといいます。「これほどの反響は、他のどの発表でも経験したことがない」とディクソン氏は語ります。
トレードウェブはロンドン証券取引所グループが過半数を出資する電子取引プラットフォームで、年金基金、ヘッジファンド、保険会社など機関投資家を主な顧客としています。そのような伝統的な金融機関が、なぜ予測市場に熱視線を送り始めたのでしょうか。
「賭け」から「金融商品」へ——何が変わったのか
予測市場とは、将来の出来事の結果に対して契約を売買する仕組みです。「次の米大統領選でX候補が勝つか否か」「ビットコインの価格が年末までに10万ドルを超えるか」といった問いに対し、参加者がYes/Noの契約を取引します。正解すれば利益が出る構造は、一見するとスポーツベッティングと変わらないように見えます。
しかし、機関投資家がこれらのプラットフォームに注目する理由は別にあります。選挙結果、地政学的リスク、経済指標の予測を、実際の投資判断に活用するためのツールとして評価しているのです。カルシの気候・気象カテゴリーや科学・テクノロジーカテゴリーでは、すでに機関投資家による数十億ドル規模の取引量が発生しているとされています。
2025年10月には、ニューヨーク証券取引所の親会社であるインターコンチネンタル・エクスチェンジ(ICE)が、カルシの最大のライバルポリマーケットに20億ドルを出資しました。高頻度取引会社のジャンプ・トレーディングはカルシとポリマーケット双方に出資し、市場流動性を提供するマーケットメーカーとして機能しています。世界最大級のマーケットメーカーであるサスケハナ・インターナショナル・グループ(SIG)は、カルシの主要マーケットメーカーを務めながら、フィンテック企業のロビンフッドと協力して独自の予測市場サービスの立ち上げも準備しています。
さらにナスダックは、将来の出来事の結果に対するYes/No形式の契約を提供する計画を米証券取引委員会(SEC)に申請。複数の投資会社が予測市場型のETF(上場投資信託)の組成をSECに提案しています。
なぜ今なのか——規制と技術の交差点
予測市場は現在、米国では商品先物取引委員会(CFTC)の管轄下にあり、デリバティブ商品として位置づけられています。一方で、スポーツ予測市場をギャンブルとして規制しようとする動きも強まっており、州当局と連邦規制当局の間で法的な争いが続いています。
この不確実性の中で、機関投資家の本格参入を阻む実務的な障壁もあります。その最大のものがマージン取引の欠如です。プロの投資家が大規模なデリバティブ取引を行う際、通常は証拠金(マージン)を差し入れるだけで、全額を前払いする必要はありません。しかし現在の主要な予測市場プラットフォームでは全額前払いが求められており、「大規模なヘッジ手段としては現実的でない」と元CFTC弁護士のジェイク・プライゼロウィッツ氏は指摘します。
それでも、ヘッジ目的での利用はすでに始まっています。インタラクティブ・ブローカーズの創業者トーマス・ペタフィー会長は、気象関連の予測市場契約を使ったヘッジの実例を紹介しています。「極端な気温は電力消費の増加、電力価格の上昇、そして特定地域での天然ガス消費増加と相関している。電力会社やパイプライン会社が典型的なユーザーだ」と述べています。
個人投資家は「食い物にされている」のか
楽観的な声がある一方で、懸念の声も聞こえてきます。スワン・ビットコインのCEO、コーリー・クリップステン氏は率直に語ります。「取引会社や暗号資産ファンドが予測市場で利益の大部分を得ている。個人投資家は毎日損をし続けている」。
予測市場の「仲介者なしで誰でも参加できる民主的な市場」というイメージと、実態としての機関投資家優位の構造。このギャップは、暗号資産市場が辿ってきた道筋と重なります。予測市場ソフトウェアのスタートアップスタンドのCEO、エドワード・リッジリー氏は「現在の状況は2017年頃の暗号資産市場に似ている」と表現します。
日本市場への直接的な接点として注目されるのが、ブラジルの金融サービス会社XP インターナショナルとの提携です。カルシはこの提携を通じて、ブラジルのクライアントが同社のプラットフォームで金融・政治予測市場を取引できるようにしました。アジア市場への展開が次のステップとなる可能性は十分あります。日本の機関投資家、特にデリバティブ取引に精通したメガバンクや証券会社がこの動向をどう評価するかは、注目に値します。
本コンテンツはAIが原文記事を基に要約・分析したものです。正確性に努めていますが、誤りがある可能性があります。原文の確認をお勧めします。
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