アルゴリズムが選べないもの——レコードが売れ続ける理由
ストリーミング全盛の時代に、なぜビニールレコードの売上は19年連続で伸び続けるのか。コルカタの中古レコード店から見えてきた、音楽消費の「もう一つの真実」。
1億曲が手のひらにある時代に、なぜ人はわざわざ埃をかぶったレコードを探しに行くのか。
ジャーナリストのインドラニル・ゴーシュ氏は先日、息子が買ったターンテーブル用のレコードを求めて、コルカタのミルザ・ガーリブ通りを訪れた。1940年代から中古レコードを扱ってきた老舗が並ぶこの通りで、彼はある「計算」をしてみた。まともなターンテーブルとスピーカーで300〜500ドル。レコード1枚が18〜42ドル。一方、Spotifyなら月額10ドルで全曲聴き放題だ。どう考えても、レコードは「不合理な選択」のはずだった。
ところが、その「不合理」が世界規模で拡大し続けている。
19年連続成長——数字が示す「逆流」
ビニールレコードのグローバル市場は19年連続で成長を続け、2025年には21億ドルに達した。2034年には36億ドルに拡大すると予測されている。米国だけでも昨年の売上は10億ドルを超え、その牽引役は意外にもZ世代だ。調査によれば、Z世代の約半数が「デジタル生活から離れたい」と答えており、物理的なメディアへの需要はノスタルジーではなく、意図的な選択として現れている。
ストリーミングが音楽産業を「民主化」したのは確かだ。Spotify、Apple Music、YouTube Musicの台頭により、誰もがほぼ無料で膨大な音楽にアクセスできるようになった。しかし同時に、音楽は「流れるもの」になった。プレイリストはアルゴリズムが組み、アーティストへの収益は1再生あたり0.003〜0.005ドル程度に過ぎない。利便性と引き換えに、何かが失われた——その「何か」を取り戻そうとする動きが、レコード復活の本質かもしれない。
日本・韓国・ブラジル——「復活」の意味は一様ではない
興味深いのは、この現象が国や文化によってまったく異なる意味を持つことだ。
日本と韓国では、レコードを買うことはアーティストへの「忠誠の証明」だ。物理的な購入がライブイベントへのアクセス権や投票権を解放する仕組みが定着しており、ストリーミングは「音楽を聴く手段」、レコードは「ファンであることを示す手段」として機能している。ソニーミュージックやSMエンターテインメントがこの仕組みを積極的に活用していることは、単なるノスタルジービジネスではなく、ファンエコノミーの一形態として捉える必要がある。
ブラジルでは話が異なる。2008年までにすべてのプレス工場が閉鎖し、その後2011年に1工場が再開した。すると、ストリーミングにすら存在しなかった音楽——1970年代にサイケデリックロックと伝統的リズムを融合させたカティア・デ・フランサの作品など——がレコードとして再発売され始めた。70代になった彼女が新たな聴衆の前でパフォーマンスを行っている。デジタルアーカイブから漏れ落ちた音楽が、アナログ媒体によって「救済」されているのだ。
そしてインドでは、2024年8月にムンバイで40年ぶりとなるレコードプレス工場が開業した。かつてはストリーミングの普及で「時代遅れ」とされたインフラが、今や新たな文化的需要に応えるために再建されている。
「アナログ特権」という批判——見落とされている視点
もちろん、この現象に懐疑的な見方もある。レコードを買える層は経済的に余裕がある人々に限られており、一部の論者はこれを「アナログ特権(analog privilege)」と呼ぶ。アルゴリズムから逃れる自由は、そもそも逃れる余裕がある人にしか与えられていない、という指摘だ。
また、日本式の「リスニングバー」——キュレーターがハイファイスピーカーでレコードを再生し、客がただ座って聴く空間——がロンドン、ニューヨーク、バルセロナに広がっていることも、この文化が特定の都市・階層に偏っている証拠とも言える。
一方で、Z世代がレコードに向かう動機を「富裕層の趣味」と片付けるのも単純すぎる。彼らの多くはデジタルネイティブとして育ちながら、アルゴリズムによる「最適化された消費」に疲弊している世代でもある。レコードを選ぶことは、単なる音質へのこだわりではなく、自分の消費体験を自分でコントロールしたいという意思表示かもしれない。
本コンテンツはAIが原文記事を基に要約・分析したものです。正確性に努めていますが、誤りがある可能性があります。原文の確認をお勧めします。
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