独裁者は選挙で負けた。その後が本当の戦いだ
ハンガリーで20年間権力を握ったオルバーン首相がついに選挙で敗北。野党のマジャル氏が勝利したが、民主主義の回復には憲法改正に必要な3分の2議席の確保が鍵を握る。
独裁者が選挙で負けることは、民主主義の回復を意味しない。これが、2026年4月13日にハンガリーで起きたことの、最も重要な教訓かもしれません。
何が起きたのか:20年ぶりの政権交代
日曜日に行われたハンガリー議会選挙で、野党のティサ党を率いるペーテル・マジャル氏が、ヴィクトル・オルバーン首相率いるフィデス党に勝利しました。オルバーン氏はわずか数時間後に敗北を認め、マジャル氏に電話で祝意を伝えました。フィデス党にとって、20年ぶりの選挙敗北です。
勝利の規模は注目に値します。マジャル氏は単に勝ったのではなく、大差での勝利を収めた可能性があります。獲得議席数によっては、ハンガリー議会の3分の2以上を確保できるかもしれません。これはハンガリー法において、憲法を自由に改正できる「魔法の数字」です。
この勝利が実現するまでには、並外れた障壁がありました。アメリカのドナルド・トランプ大統領は選挙直前、JDバンス副大統領をハンガリーに派遣し、オルバーン氏と共に選挙集会に参加させました。さらに投票前夜には、オルバーン氏が求めれば米国の「経済力の全てを」ハンガリー経済の支援に向けると約束しました。それでもマジャル氏は勝利しました。
なぜオルバーン氏は「負けないはずだった」のか
この勝利がいかに驚異的かを理解するには、オルバーン氏がいかに徹底的に選挙制度を自党に有利に作り変えていたかを知る必要があります。
2010年に3分の2の議席を獲得した後、フィデス党は選挙区を自党の農村票が有利になるようゲリマンダリング(恣意的な区割り)しました。公共メディアを事実上の党機関紙に変え、独立系メディアを政府系に売却させました。複数の野党が互いに争わざるを得ない選挙制度を構築し、不平等な選挙資金規制を導入しました。
プリンストン大学でハンガリー選挙法を研究するキム・レーン・シェッペル氏は、「ルールがあまりにも歪められているため、オルバーン氏は世論の差を10〜15ポイント程度は埋められる」と指摘していました。
さらに最近の調査では、より古典的な権威主義的手法も明らかになっています。地方のフィデス党幹部が遠隔地の有権者に対し、フィデスに投票しなければ仕事を失う、あるいは公的給付を打ち切ると脅迫していたことを示す証拠が集まりました。ハンガリー市民自由連合のダニエル・デブレンテイ氏は、この脅迫が40万〜60万人のハンガリー人に影響を与えたと推計しています。有権者総数が約800万人の国において、これは無視できない数字です。
それでも、なぜマジャル氏は勝てたのでしょうか。
一つには、マジャル氏自身が優れた候補者だったことが挙げられます。彼はオルバーン政権の「内部告発者」的存在で、元妻がオルバーン政権の法務大臣を務めていました。社会政策や移民問題では保守的な立場を維持しており、フィデスが「左翼グローバリスト」として攻撃することが難しかったのです。左派を含む全野党がティサ党の後ろに結集し、「フィデスを倒す」という一点で大同団結しました。
そして何より、経済への不満が決定的でした。オルバーン政権下でハンガリー経済は低迷し、かつての共産圏仲間であるポーランドやチェコに大きく水をあけられ、EUでも最貧国の一つになっていました。政権と結びついた少数の寡頭層が経済を支配する腐敗した構造が、一般市民の生活を直撃していたのです。
勝利の後に待つ、より大きな戦い
オルバーン氏が選挙結果を素直に受け入れたことは、最悪のシナリオ——2020年のトランプ氏のような選挙結果の無効化——を回避できる可能性を示しています。しかし、それで安心はできません。
オルバーン氏にはまだ、残任期間中に議会を召集し、憲法を改正する機会があります。最も懸念されているのは、ハンガリーを議院内閣制から大統領制に変更するというシナリオです。現在のハンガリー大統領はフィデス系の人物で、権限は限られています。しかしオルバーン氏が大統領職を強化し、自らがその座に就けば——トルコのエルドアン大統領が用いた手法です——マジャル氏は名目上の首相に過ぎなくなります。
そして最大の課題は、オルバーン氏が16年間かけて構築した制度的な支配の解体です。司法、規制機関、官僚機構、さらには芸術分野の機関に至るまで、ハンガリーの国家機構のほぼ全てがフィデスの影響下に置かれています。
これらを解体するには、選挙区の再画定だけでは足りません。裁判所からオルバーン系人物を排除し、政府のメディア独占を解体し、汚職防止の仕組みを再建し、真に中立な税務当局を作り直す必要があります。それと同時に、近隣のウクライナ戦争への対応、EUとの関係修復、そして露骨にオルバーン支持を表明した米国との外交も並行して行わなければなりません。
これは事実上の憲法的体制転換を必要とします。そしてそれは、3分の2の議席なしにはほぼ不可能です。
3分の2を確保できなければ、フィデスが埋め込んだ制度的障壁がティサ政権の手足を縛り続けます。4年間の停滞の後、フィデスが復活する——それが最も現実的なシナリオとして浮かび上がります。
日本にとっての意味:「制度の耐久性」という問い
ハンガリーの事例は、遠い欧州の話として片付けられません。民主主義の制度がいかに脆弱であるか、そして一度損なわれた制度を回復することがいかに困難かを、鮮明に示しています。
日本においても、選挙制度、メディアの独立性、司法の中立性は、時に「機能しているが完全ではない」と評されることがあります。ハンガリーの例は、制度的な歪みが長期にわたって蓄積された場合、選挙での勝利だけでは民主主義を取り戻せない可能性を示唆しています。
また、地政学的な観点からも注目に値します。EU内の権威主義的な「例外」が解消されることは、欧州の政治的結束を強める可能性があります。これはロシアや中国との関係だけでなく、日欧関係やG7の枠組みにも影響を与えうる変化です。
本コンテンツはAIが原文記事を基に要約・分析したものです。正確性に努めていますが、誤りがある可能性があります。原文の確認をお勧めします。
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