トルコが目指すイスラム系学生のハブ戦略、2028年までに外国人学生50万人へ
トルコが外国人学生数を31%増の50万人に拡大する計画を発表。イスラム系学生を中心とした教育ハブ戦略の背景と、日本の大学への影響を分析します。
イスタンブールの名門私立大学コチ大学で電気電子工学の修士課程を学ぶインドネシア人学生、アズカ・マウラ・イスカンダル・ムダ氏は明確な理由を持ってトルコを選んだ。「コストパフォーマンスが優れているから」。
この一人の学生の選択が、実はトルコの野心的な国家戦略を物語っている。トルコ政府は2028年までに外国人学生数を現在より31%増加させ、50万人に拡大する計画を発表した。
イスラム世界の「教育のシンガポール」を目指す
トルコの戦略は単なる学生数増加ではない。地理的優位性と文化的親和性を活かし、イスラム系諸国の学生を中心とした教育ハブの構築を目指している。エルドアン政権下で推進されるこの政策は、ソフトパワー外交の一環でもある。
現在、トルコの大学には約38万人の外国人学生が在籍している。主な出身国はシリア、アフガニスタン、イラク、そしてインドネシアなど、イスラム系諸国が中心だ。これらの学生の多くは、欧米の大学に比べて3分の1から半分程度の学費で質の高い教育を受けることができる。
日本の大学が直面する新たな競争
この動きは、アジアの優秀な学生獲得を目指す日本の大学にとって新たな挑戦となる。特に工学系分野では、トルコの大学が提供する英語プログラムと手頃な学費が、日本の大学の魅力を相対的に低下させる可能性がある。
文部科学省が推進する「留学生30万人計画」の達成に向けて、日本の大学は従来のアジア太平洋地域に加え、中東・アフリカ地域からの学生獲得でもトルコと競合することになりそうだ。
地政学的な計算
トルコの教育戦略には明確な地政学的計算がある。NATO加盟国でありながらイスラム世界との橋渡し役を自任するトルコにとって、教育を通じた影響力拡大は重要な外交ツールだ。
卒業後、これらの学生が母国で要職に就けば、トルコとの経済的・政治的関係強化につながる。実際、トルコの建設会社や商社は、こうした人脈を活用してアフリカや中東での事業を拡大している。
一方で、この戦略にはリスクも伴う。急激な外国人学生増加は、国内学生との競争激化や社会統合の課題を生む可能性がある。また、経済状況の悪化により、政府の教育投資が持続できるかという懸念もある。
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