トランプ氏「承認なければ長くない」—米国はイランの最高指導者選びに介入できるか
米国とイスラエルがイランへの攻撃を開始してから約1週間。トランプ大統領はイランの次期最高指導者の選出に「米国の承認が必要」と発言。中東情勢と原油価格の行方を多角的に読み解く。
「彼は我々の承認を得なければならない。得られなければ、長くはないだろう」——ドナルド・トランプ米大統領は3月9日、ABCニュースのインタビューでそう言い切った。攻撃開始からわずか8日。イランの最高指導者の後継者選びに、米国が公然と影響力を行使すると宣言したのだ。
何が起きているのか
2月28日、米国とイスラエルはイランへの軍事攻撃を開始した。その数時間後、アリー・ハメネイー最高指導者が死亡した。イランの専門家会議(Assembly of Experts)のメンバーは3月8日、すでに後継者の選定を行ったと明らかにした。
トランプ大統領はこの動きに対し、「将来の政権が5年後に同じことをしなければならない事態は避けたい」と述べ、次期最高指導者が核開発を継続すれば再び軍事行動も辞さない姿勢を示した。一方、アッバース・アラグチーイラン外相は「誰にも内政干渉は許さない。イランの指導者を選ぶのはイラン国民だ」と真っ向から反論した。
戦況は拡大している。米軍の死者はすでに7人に達し、イラン国内の死者は1,332人、湾岸諸国とイスラエルでも計22人が犠牲になった。米国とイスラエルは初めてテヘランの石油貯蔵・精製施設を攻撃し、イランはバーレーンの海水淡水化プラントへのドローン攻撃で報復した。
なぜ今、これが重要なのか
この戦争の経済的な余波は、日本にとって他人事ではない。日本は原油輸入の約90%以上を中東に依存しており、ホルムズ海峡の安定は日本経済の生命線だ。原油価格の急騰はすでに始まっており、トヨタやニッサンなどの製造業、さらには家庭の光熱費にも直接影響が及ぶ可能性がある。
トランプ政権はこの懸念を「短期的な混乱」と表現し、戦略石油備蓄(4億ガロン)の活用やベネズエラ産原油の確保で対応すると説明している。しかしエネルギー専門家たちは、ベネズエラの石油産業の再建には数年単位の時間がかかると指摘しており、即効性には疑問符がつく。
一方で、オマーン外相のバドル・アルブサイーディー氏は、米国とイランの間で進んでいた核問題をめぐる間接交渉が「公正で名誉ある解決策」に向けて前進していた段階で攻撃が始まったと証言した。外交の余地はまだあったのか——この問いは今も答えが出ていない。
各方面の反応と複雑な利害
米国内では、民主党議員の多くがトランプ大統領に「イランが差し迫った脅威であることを示す証拠が不十分だ」と批判している。共和党にとっても、11月の中間選挙を前に原油価格の高騰は政治的な痛手になりかねない。
アラブ連盟の緊急閣僚会議では、オマーンが「地域は危険な転換点に直面している」と警告した。湾岸諸国は米国の軍事力に安全保障を依存しながらも、戦火が自国に飛び火することへの不安を隠せない。あるアナリストは「湾岸諸国が米国の能力を疑い始めている」とも指摘している。
イスラエルの米国大使イェキエル・ライター氏は、イランの濃縮ウランを押収するための地上作戦も「視野に入っている」と明言した。ブルームバーグとアクシオスも米・イスラエルがその可能性を検討していると報じており、戦争の第2幕が始まる可能性も排除できない。
日本の視点から見れば、エネルギー安全保障の問題に加え、もう一つの懸念がある。米国が「同盟国の承認なし」に中東の政治秩序を塗り替えようとする姿勢は、日本が長年依拠してきた「ルールに基づく国際秩序」という枠組みそのものへの問いかけでもある。
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