ホルムズ海峡封鎖:世界最大の石油供給危機が問うもの
米国とイスラエルのイラン攻撃後、ホルムズ海峡が事実上封鎖。世界の石油の5分の1が止まり、トランプ政権は同盟国に協力を求めるが、欧州諸国は拒否。日本エネルギー安全保障への影響を多角的に分析。
世界の石油の5分の1が、今この瞬間も流れていない。
2026年3月、ホルムズ海峡は事実上の封鎖状態にある。歴史家のグレゴリー・ブルー氏が「史上最大の供給ショック」と表現したこの事態は、遠い中東の出来事ではありません。日本が輸入する原油の約8割以上がこの海峡を通過しており、エネルギー自給率が極めて低い日本にとって、これは直接的な生活問題です。
何が起きているのか
事の発端は、米国とイスラエルによるイランへの軍事攻撃でした。昨年6月の核施設への空爆に続き、今年3月初旬に再び攻撃が行われ、イランはホルムズ海峡を実質的に封鎖することで報復しました。イランとオマーンの間に挟まれたこの幅わずか33キロメートルの海峡は、サウジアラビア、UAE、クウェート、イラクなど主要産油国からの原油輸出の大動脈です。
トランプ大統領はこの週末、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、中国・フランス・日本・韓国・英国などに対し、海峡再開のために「軍艦を派遣する」よう呼びかけました。「すでに熱心に動いている国もある」と月曜日に語ったものの、実態はかなり異なります。ドイツ、イタリア、スペインをはじめとする複数のNATO加盟国がすでに協力を拒否しており、トランプ政権が描く「有志連合」の形成は難航しています。
米国内でも影響は深刻で、ガソリン価格は1ヶ月前と比べて約80セント上昇し、1ガロンあたり3.72ドルに達しています。歴史家ブルー氏は、たとえ近い将来に海峡が再開されたとしても、価格の高止まりは2027年まで続く可能性があると指摘しています。
トランプ政権の「誤算」
トランプ政権は、当初は軍事的成功を積み重ねていました。今年1月にはベネズエラのマドゥロ大統領拘束作戦が米兵の犠牲なく成功し、昨年6月のイラン核施設攻撃も限定的な反撃にとどまりました。しかし今、軍事的勝利が必ずしも政治的・経済的解決につながらないという現実に直面しています。
ホルムズ海峡の再開に向けた「簡単な選択肢」はありません。イランを再び攻撃すれば事態はさらに悪化するリスクがあり、外交交渉には時間がかかります。同盟国の協力なしに海峡警備を行うには、米軍だけでは人的・物的リソースが不足しています。そして何より、欧州諸国の拒否反応は、「米国が始めた戦争の後始末に付き合う義務はない」という強いメッセージを含んでいます。
日本はどう向き合うべきか
日本はトランプ大統領が名指しした国の一つです。石破政権は難しい判断を迫られています。
経済的観点からは、海峡の早期再開は日本の国益に直結します。原油価格の高騰は、エネルギーコストの上昇を通じて製造業、物流、家計に広く影響します。トヨタや新日鉄のような製造業大手はすでにコスト計算を見直していると見られ、エネルギー集約型産業への打撃は少なくありません。
一方、軍事的関与には慎重論が根強くあります。自衛隊の海外派遣には憲法上・法律上の制約があり、「有志連合」への参加が日本をイランとの対立に直接引き込む可能性もあります。また、中国が今回の呼びかけにどう応じるかも、日本の判断に影響します。中国はイランの重要な貿易相手国であり、単純に「同じ側」に立つとは考えにくい。
文化的・外交的な観点からも、日本はイランと長年にわたる友好関係を維持してきました。1979年の革命後も経済関係を保ち続けた数少ない西側寄り国家の一つです。その日本が米国主導の軍事行動に加わることは、中東外交における日本のポジションを根本から変えることを意味します。
記者
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