ホルムズ海峡を「売った」日、日本のエネルギーは誰が守るのか
トランプ政権がイランとの「意向書」交渉を進め、ホルムズ海峡の実効支配をイランに譲渡しようとしている。日本の原油輸入の約8割が通過するこの海峡の行方は、日本のエネルギー安全保障に直結する。
日本が輸入する原油の約8割が通過する海峡を、アメリカが事実上イランに引き渡そうとしている。
トランプ大統領は2026年5月20日、イスラエルのネタニヤフ首相との電話会談で、イランとの「意向書(letter of intent)」交渉を進めていると説明した。その内容は、戦争を正式に終結させ、イランの核開発とホルムズ海峡の再開を巡る30日間の交渉期間を設けるというものだ。大西洋評議会のシニアフェローで外交政策アナリストのロバート・ケーガン氏はこの動きを「降伏の婉曲表現」と断じている。
37日間の空爆が生んだ「逆説的な勝者」
今年3月18日、イスラエルがイランのパルスガス田を攻撃したことで始まったこの紛争は、37日間にわたるアメリカとイスラエルの集中的な空爆をもたらした。しかしイランは、カタールの主要な天然ガス生産施設への報復攻撃で応じ、その後トランプ大統領自らがエネルギーインフラへの攻撃停止を呼びかけた。
その後も繰り返されたトランプ氏の「攻撃再開」脅迫は、いずれも実行されなかった。テヘランの指導部は2か月間、この「脅し」を見抜いていたとされる。そして今、イランが提示している和平条件は、まるで戦勝国のそれだ。戦争賠償、ウラン濃縮制限なし、海峡の支配権の承認、そして制裁の全面解除——これらがイラン側の要求である。
問題は海峡の「新体制」が、すでに既成事実化されつつある点だ。戦争研究所(ISW)の報告によれば、イランは停戦期間を利用して石油輸入国に「通行協定」の締結を迫り、未締結国の船舶には通行料を課している。ロシアと中国は優先通行権を得て、インドやパキスタンは個別交渉が認められる見通しだ。アメリカやイスラエルと関係の深い国の船舶は、通行を全面的に拒否される可能性がある。
韓国、トルコ、イラクはすでに少なくとも暫定的な通行協定の交渉を始めているという。
日本にとって、これは「他人事」ではない
日本にとって、この事態の深刻さは数字が物語る。日本の原油輸入量のうち、中東産が占める割合は依然として90%超(2025年度実績)であり、そのほぼすべてがホルムズ海峡を通過する。サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェート——これらの国々からのタンカーが海峡を通れなくなれば、あるいは通行料という名の「税」を課されれば、そのコストは最終的に日本の家庭と企業が負担することになる。
トヨタや新日本製鉄をはじめとした製造業、そして電力各社にとって、エネルギーコストの上昇は直接的な競争力低下を意味する。2022年のウクライナ侵攻後に経験した電気代・ガス代の急騰を、日本社会はまだ記憶している。今回はその「震源地」が、より日本に近い場所にある。
外交的な文脈でも、日本は難しい立場に置かれる。日本は長年、独自の「中東外交」を展開し、イランとも一定の関係を維持してきた。しかし日米同盟を基軸とする安全保障政策との間で、どのような均衡点を見つけるか。韓国や湾岸諸国が次々とイランと通行協定を結ぶ中で、日本だけが「原則論」を貫けるのか——それは政治的な問いであると同時に、経済的な問いでもある。
「覇権の空白」が生む慢性的不安定
ケーガン氏が指摘するように、覇権国が覇権を手放したとき、その空白を埋めるのは秩序ではなく混乱だ。ホルムズ海峡がイランの「収益源」となれば、通行料の値上げ、恣意的な通行拒否、地域紛争のたびに繰り返される「封鎖の脅し」——これらが新たな常態となりうる。
イスラエルの孤立も見過ごせない。ハマスやヒズボラへの資金・武器供与が再び活発化すれば、中東の不安定は長期化する。アブラハム合意の崩壊は、湾岸諸国とイスラエルの間の経済的・外交的橋渡しを失わせ、地域全体の地政学的地図を塗り替える。
トランプ大統領は金融市場が安定すれば「勝利」を演出できると計算しているかもしれない。確かに、海峡が「誰かの管理下」で再開通すれば、原油価格は一時的に落ち着くだろう。しかしそれは、新しい「通行料」を払い続けることへの市場の適応であって、安定の回復ではない。
本コンテンツはAIが原文記事を基に要約・分析したものです。正確性に努めていますが、誤りがある可能性があります。原文の確認をお勧めします。
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