トランプ外交の「挑発的人事」が問いかける同盟関係の未来
トランプ政権の大使人事が各国で物議を醸している。重罪者や不適格者の起用は偶然か、それとも計算された戦略なのか。
チャールズ・クシュナー駐仏大使が、フランス政府からの召喚を拒否した。外交官としては異例の行動だが、実は彼は重罪で服役した経歴を持つ人物でもある。なぜトランプ大統領は、このような人物を重要な同盟国の大使に任命するのだろうか。
世界各地で繰り返される外交的摩擦
外交官の基本的な役割は、派遣国の利益を代表し、相手国との良好な関係を維持することだ。しかし、トランプ政権の大使たちは異なる行動パターンを示している。
クシュナー大使(ジャレッド・クシュナーの父親)は、フランス政府が極右活動家殺害事件への米国務省の介入に抗議して召喚した際、2度目の出頭拒否を行った。その結果、フランス政府は彼との一切の接触を禁止する措置を取った。
ポーランドでは、トム・ローズ大使が下院議長との「一切の連絡を断つ」と宣言した。理由は議長がトランプ大統領のノーベル平和賞受賞に疑問を呈したことだった。カナダ、チリ、アイスランドでも類似の問題が発生している。
中東で炎上した「聖書外交」
最も深刻な事態はマイク・ハッカビー駐イスラエル大使が引き起こした。タッカー・カールソンとのインタビューで、聖書を根拠に「イスラエルが中東全体を支配しても構わない」と発言したのだ。
「ナイル川からユーフラテス川まで」の土地について問われたハッカビー大使は、「彼らが全てを取っても問題ない」と答えた。この発言は中東全域で激しい反発を招き、米大使館が火消しに追われる事態となった。
「侮辱」が目的の人事戦略
権威主義研究の専門家ルース・ベン=ギアット教授は、これらの人事について「民主的外交の死を象徴するため、意図的に重罪者を配置した」と分析している。
トランプ大統領は、NATO大使に外交経験のないマシュー・ウィタカー、ギリシャ大使に息子の元恋人キンバリー・ギルフォイル、バハマ大使にスキャンダルで政治生命を絶たれた元フットボール選手ハーシェル・ウォーカーを任命した。
日本にとっての示唆
日本は長年、アメリカとの同盟関係を外交・安全保障政策の基軸としてきた。しかし、トランプ政権の「挑発的外交」は、従来の同盟関係の前提を根本から問い直すものだ。
日本の外交官たちは、相手国への敬意と細やかな配慮を重視する「和の外交」を実践してきた。一方で、アメリカの新たな外交スタイルは、意図的な挑発と対立を厭わない。この根本的な価値観の違いが、今後の日米関係にどのような影響を与えるのか。
ダン・ケイン将軍が「同盟関係が整わない状況でのイラン戦争」への懸念を表明したように、外交的混乱は安全保障上のリスクも生み出している。
記者
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