アメリカの小児性別医療、医師団体が方針転換へ
アメリカの主要医師団体が小児への性別適合手術に慎重姿勢を示し、「肯定的ケア」から証拠に基づく医療への転換点を迎えている
130万人の医師を代表するアメリカの主要医学団体が、これまで「議論の余地なし」と断言してきた小児への性別適合医療について、突然方針を転換した。なぜ今、医療界は立場を変えたのか。
医療界の「常識」が覆った瞬間
2月3日、アメリカ形成外科学会(ASPS)は画期的な声明を発表した。「外科医は、患者が少なくとも19歳になるまで、性別関連の胸部、生殖器、顔面手術を延期すべきである」。翌日、130万人の医師を擁するアメリカ最大の医師団体アメリカ医師会(AMA)もこの見解を支持すると表明した。
これは医療界にとって大きな方向転換だった。2023年の議会小委員会で、民主党議員メアリー・ゲイ・スキャンロンは「性別肯定的ケアは安全で効果的であり、すべての主要医学会に支持されている。議論の余地はない」と断言していた。アメリカ自由人権協会(ACLU)も「医師たちは同意している:性別肯定的ケアは命を救うケアである」と主張してきた。
証拠の薄さが露呈した背景
なぜ医療界は立場を変えたのか。ASPSの声明は、英国のキャス・レポートと米国保健福祉省の証拠レビューを明確に支持している点が注目される。これまでLGBTQ団体や性別専門医らは、これらの報告書を「右翼の攻撃材料」として退けてきた。しかし、キャス博士は無党派の退職小児科医であり、保健福祉省報告書の著者の多くは自称リベラルや民主党支持者だった。
ASPSは両報告書を好意的に引用し、新ガイドラインの根拠としている。「キャス・レビューと保健福祉省報告書はともに、小児の性別違和感の自然経過が十分に理解されていないことを強調している」と声明は述べ、「利用可能な証拠は、思春期前に発症した性別違和感を持つ子どもの相当な割合が、医学的・外科的介入なしに成人期までに症状の解決または著しい軽減を経験することを示唆している」と続けた。
「後悔しても胸は作り直せる」の現実
この変化の背景には、医師の自己規制への不信もある。マイアミの外科医シドバ・ギャラガーは、TikTokで乳房切除術を「yeet the teet」と呼び、自らを「Dr. Teetus Deletus」と名乗って注目を集めた。ロサンゼルス小児病院の元医師ヨハンナ・オルソン・ケネディは、「年齢ではなく個人のニーズに基づいて」乳房切除術を提供すべきだと論文で推奨し、セミナーで「後悔を心配していない。人生の後の段階で胸が欲しければ、手術で作ることができる」と豪語していた。
compare-table
| 観点 | 従来の「肯定的ケア」 | 新しい慎重アプローチ |
|---|---|---|
| 手術年齢 | 個人のニーズ重視 | 19歳まで延期推奨 |
| 証拠基準 | 医学会の権威に依存 | 独立した証拠レビュー重視 |
| 自然経過 | 早期介入が必要 | 多くが自然に改善する可能性 |
| 自殺予防効果 | 「命を救う」と主張 | 明確な証拠なしと認める |
しかし現実は異なる。ニューヨーク州での最近の裁判で、フォックス・バリアンという脱トランジション者は、男性として自認してからわずか11ヶ月後の16歳で乳房切除術を受けたと証言した。彼女は自閉症の診断も受けており、摂食障害と不安に苦しんでいた。手術までに名前を2回変更していた。バリアンは手術を即座に後悔し、3年後に脱トランジションしたが、200万ドルの損害賠償を認められた。
日本への示唆と課題
日本の医療界は、この米国の変化をどう受け止めるべきか。日本では小児への性別適合手術はまだ一般的ではないが、ホルモン治療については議論が始まっている。日本精神神経学会や日本小児科学会は、慎重な姿勢を維持しているが、患者や家族からの要望は増加している。
米国の経験は、医学的権威への過度な依存の危険性を示している。「すべての主要医学会が支持している」という論法は、科学的証拠の不足を覆い隠すために使われてきた。日本の医療界も、欧米の動向を参考にしながらも、独自の慎重なアプローチを維持することが重要だろう。
記者
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