テザーが米国規制対応で大転換、1870億ドル市場の覇権争いが激化
テザーCEOが米国政府と協力し新規制対応ステーブルコインUSATを発表。Circle、Fidelityとの競争激化で暗号通貨市場の構図が変わる可能性。
規制当局から逃げ回っていた男が、今度はホワイトハウスの会議室に座っている。
テザーのCEOパオロ・アルドイノ氏が今週、主要メディアに相次いで登場した理由は明確だ。同社が米国規制に対応した新しいステーブルコイン「USAT」を発表し、CircleのUSDCに真っ向勝負を挑む姿勢を鮮明にしたからである。
規制回避から政府協力へ180度転換
テザーの変貌は劇的だ。数年前まで同社は「資金洗浄業者の夢」と呼ばれ、アルドイノ氏は米国を避けて海外から事業を運営していた。しかし現在、テザーはFBIやシークレットサービスと協力し、300近い法執行機関と連携している。
この転換の背景には、ハワード・ルトニック氏の存在がある。カンター・フィッツジェラルドの元CEOで現商務長官のルトニック氏の会社がテザーの準備金を管理しており、政治的な後ろ盾を得た形だ。
テザーの主力商品USDTは1870億ドルの市場規模を誇り、全ステーブルコイン競合他社を合わせた規模を上回る。5億3600万人のユーザーを抱え、四半期ごとに3000万人ずつ増加している。「Facebookのような成長ペースだ」とアルドイノ氏は語る。
金融包摂の成功事例か、リスクの温床か
アルドイノ氏はテザーを「人類史上最大の金融包摂成功事例」と位置づける。アルゼンチンでは過去5年でペソが米ドルに対して94.5%下落し、ハイチでは平均日給が1.34ドルという状況で、ステーブルコインが救済手段となっているという主張だ。
一方で批判も根強い。昨夏のエコノミスト誌報道では、ロシアの資金洗浄業者がテザーを使って英国の薬物組織、モスクワのハッカー、制裁対象のオリガルヒ、ロシア諜報機関を結びつけていたとされる。
アルドイノ氏はこうした指摘を「大海の一滴」と一蹴し、「iPhoneもトヨタも悪人に使われることがある」と反論する。むしろブロックチェーンの透明性により、現金よりも法執行機関にとって追跡しやすいと主張している。
日本への影響と課題
日本では金融庁がステーブルコインに関する規制整備を進めており、三菱UFJ銀行なども独自のデジタル通貨実証実験を行っている。テザーの米国市場参入は、日本の金融機関にとっても競争環境の変化を意味する。
特に注目すべきは、テザーが350億ドルの準備金を保有し、「従来の銀行よりも安全」と主張している点だ。日本の銀行が部分準備制度で運営される中、テザーは100%を超える準備金を維持している。
Fidelity、JPモルガン、PayPalといった金融大手がステーブルコイン市場に参入する中、日本企業の対応も注目される。ソニーグループやSBIホールディングスなど、暗号通貨事業に関心を示す企業にとって、規制対応と市場戦略の見直しが迫られるかもしれない。
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