ホルムズ海峡封鎖宣言——日本のエネルギーに何が起きるか
イランの新最高指導者モジュタバ・ハメネイ師がホルムズ海峡封鎖を宣言。日本の原油輸入の約8割が通過するこの海峡が封鎖された場合、日本経済と市民生活にどのような影響が及ぶのかを多角的に分析します。
日本が輸入する原油の約8割が、幅わずか33キロメートルの海峡を通過している。もしその海峡が閉じられたら——今、その「もし」が現実の問いになりつつあります。
新最高指導者の「最初の言葉」が意味するもの
モジュタバ・ハメネイ師は、父であるアリー・ハメネイ師の後を継いでイランの最高指導者に就任した直後、その最初の公式声明でこう述べました。「ホルムズ海峡封鎖というレバーは、必ず使わなければならない」。
これは単なる修辞ではありません。ホルムズ海峡は世界の原油海上輸送量の約5分の1を担う戦略的要衝です。新指導者はさらに、湾岸諸国に対して「できるだけ早く米軍基地を閉鎖するよう」求め、米国への報復と「殉教者たちの血に報いる」ことも誓いました。
父ハメネイ師の時代から続いてきた対米強硬路線を、息子は就任の第一声で継承するどころか、さらに先鋭化させたと言えます。背景には、ドナルド・トランプ前大統領による「最大限の圧力」政策の再開や、イランが「殉教者」と呼ぶ革命防衛隊幹部らの死があります。イラン国内では、強硬姿勢を示すことが指導者としての正統性を確立する上で不可欠とも見られています。
日本にとっての「エネルギーの急所」
日本はエネルギー自給率が約13%(2023年度)と主要国の中でも際立って低く、原油のほぼ全量を輸入に頼っています。その輸入先の中心は中東であり、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェートからの原油はいずれもホルムズ海峡を経由して日本に届きます。
1973年の第一次オイルショックは、日本社会にトイレットペーパーの買い占めや深刻な物価高騰をもたらしました。あの経験から半世紀以上が経ちましたが、日本のエネルギー構造の脆弱性は本質的には変わっていません。原子力発電の再稼働や再生可能エネルギーの拡大は進んでいますが、産業用エネルギーや輸送燃料における石油依存は依然として高いのが現実です。
トヨタ、日産、新日本製鐵といった日本の基幹産業は、原油価格の急騰に対して非常に敏感です。ホルムズ海峡が実際に封鎖、あるいは封鎖に近い状態になれば、原油価格は短期間で1バレル=150ドルを超えるという試算もあります。電気代、ガス代、食料品価格——あらゆる物価が連動して上昇し、すでに物価高に苦しむ日本の家計をさらに圧迫することになります。
「宣言」と「実行」の間にある距離
ただし、冷静に見る必要もあります。ホルムズ海峡封鎖の「宣言」と「実行」の間には、大きな距離があります。
イランがホルムズ海峡を完全に封鎖すれば、それはイラン自身の原油輸出も止まることを意味します。イラン経済にとっても致命的な打撃となるため、完全封鎖は「最終手段」に過ぎず、現実的には部分的な妨害や威嚇行為にとどまるという見方が専門家の間では多数派です。また、米国をはじめとする各国海軍が海峡の航行自由を守るために展開しており、軍事的な均衡も無視できません。
一方で、モジュタバ・ハメネイ師の就任は、イランの対外政策に新たな不確実性をもたらしています。父の時代には「計算された強硬姿勢」が基本でしたが、新指導者がどの程度のリスクを許容するかは、まだ誰にもわかりません。就任直後の強硬発言が、内政向けのパフォーマンスなのか、本気の政策転換の予告なのか——その見極めが、今後の国際社会の最大の関心事の一つとなっています。
日本政府はこうした事態に備え、国家石油備蓄(約145日分)を保有していますが、危機が長期化した場合の対応には限界があります。エネルギー調達先の多角化(米国産LNG、オーストラリア産資源など)も進めてきましたが、中東依存の構造を短期間で変えることは容易ではありません。
記者
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