仲介者を演じるプーチン:イラン危機が生む「棚ぼた」
米国とイスラエルのイラン攻撃が続く中、ロシアのプーチン大統領は調停者として存在感を示そうとしている。しかし原油高騰と制裁緩和の可能性は、ウクライナ戦争を続けるモスクワに思わぬ経済的恩恵をもたらしている。
1バレル120ドル。今週の原油価格は、イラン危機を受けてこの水準まで急騰した。ウクライナで戦争を続けるロシアにとって、これは「渡りに船」以上の意味を持つ。
「平和の使者」という難しい役回り
プーチン大統領は今週、わずか1週間で2度にわたりイランのペゼシュキアン大統領と電話会談を行った。米国とイスラエルによるイランへの攻撃が続く中、クレムリンは「迅速な緊張緩和と政治的解決」を呼びかけている。
だが、この「調停者」という役割には根本的な矛盾が伴う。2022年に独立国家ウクライナへの全面侵攻を命じた指導者が、今度は国際社会の平和仲介者として名乗りを上げているのだ。当時、国連総会はこの侵攻を国連憲章違反として非難した。そのロシアが今、別の戦争の「解決」を訴えている。
クレムリンによれば、プーチンは月曜日にトランプ大統領との電話会談で「湾岸諸国の指導者やイラン大統領との接触を踏まえた、外交的解決に向けた考え」を伝えたという。トランプ大統領は「プーチンは助けになりたがっている」と述べたが、すぐにこう付け加えた。「私は彼に言った。『ウクライナとロシアの戦争を終わらせることの方が、もっと助けになる』と」。
ロシアとイランの間には「包括的戦略パートナーシップ」協定が存在し、プーチンは今週も「揺るぎない支持」をテヘランに再確認した。しかしこの協定は相互防衛条約には程遠く、モスクワが選んだのは軍事支援ではなく「調停の申し出」だった。
ウクライナ戦争を支える「棚ぼた」収入
プーチンが調停を演じる裏側で、イラン危機はロシアに具体的な経済的利益をもたらしている。
ロシアの連邦予算は1バレル59ドルの原油輸出を前提に組まれている。ここ数ヶ月、原油価格はその水準を大きく下回っていた。ところが今週、価格は約120ドルまで急騰した。その後やや下落したものの、依然として59ドルを大幅に上回る水準にある。この差額は、ウクライナでの戦争継続に直接充てられる財源となる。
さらに見逃せない動きがある。トランプ大統領は、イラン危機による供給不足を緩和するため、「いくつかの国」の石油関連制裁を免除する可能性を示唆した。もしロシアへの制裁が緩和されれば、モスクワは原油高騰に加え、輸出量の増加という二重の恩恵を受けることになる。
ゼレンスキー大統領はこれを「キーウへの深刻な打撃になる」と述べ、トランプに翻意を促した。一方、親クレムリン系紙コムソモリスカヤ・プラウダは「高い原油価格は(西側が)制裁を解除する理由になる」と楽観的な見出しを掲げた。
各方面からの視線
ワシントンから見れば、ロシアの調停申し出は利用価値があるかもしれない。トランプ政権はイラン問題の外交的出口を模索しており、プーチンとの関係を「有益」と位置づけている。クレムリンもまた、トランプとの良好な関係がウクライナ問題での有利な条件につながると計算している。
キーウにとってこの状況は二重の脅威だ。制裁緩和によるロシアの財政強化と、ウクライナ問題が中東危機の陰に隠れて国際社会の関心から遠ざかるリスク。ゼレンスキー政権の焦りは理解できる。
日本にとっても、この状況は無縁ではない。原油価格の高止まりは、エネルギーの大半を輸入に頼る日本経済に直接影響する。円安が続く現在、エネルギーコストの上昇は企業収益を圧迫し、消費者物価にも波及する。トヨタや新日本製鉄など製造業大手にとって、原材料・物流コストの増加は避けられない課題となりうる。
ロシア国内のメディアは割れている。親クレムリン系は制裁解除への期待を前面に出す一方、タブロイド紙モスコフスキー・コムソモレツは「『平和の大統領』は正気を失った」「皇帝は裸だ。いや、正気を失っている」とトランプを痛烈に批判した。
記者
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