億万長者のためのデモ行進?カリフォルニア富裕税論争の奇妙な展開
AI起業家が「億万長者のためのデモ行進」を企画。カリフォルニア州富裕税案をめぐる論争が、予想外の方向に発展している理由とは。
10億ドル以上の資産に対して5%の一回限りの税金を課す。カリフォルニア州で提案されたこの「億万長者税」案をめぐって、今週末、サンフランシスコで「億万長者のためのデモ行進」が開催される予定だ。
企画したのは、AI スタートアップ RunRL の創設者 デリック・カウフマン 氏。当初は悪ふざけではないかと疑われたこのイベントだが、カウフマン氏は本気だと明言している。
なぜ今、億万長者を擁護するのか
カリフォルニア州議会で審議中の「億万長者税法案」は、10億ドル以上の資産を持つ州民に対して、総資産の5%を一回限り課税するものだ。医療従事者組合 SEIU が支援するこの法案は、公共サービスの財源確保と連邦予算削減の補填を目的としている。
しかし、シリコンバレーの起業家たちからは猛反発が起きている。カウフマン氏は「この税制はスタートアップ創設者の『紙の上の富』を直撃する」と懸念を表明する。「彼らは不利な条件で株式を売却せざるを得なくなり、キャピタルゲイン税を支払い、経営権を手放すことになりかねない」
実際、多くのテック業界の著名人が州外への移住を示唆したり、すでに転出したりしている。州議会では法案阻止のためのロビー活動が活発化している状況だ。
日本企業への影響と示唆
この論争は、日本企業にとっても他人事ではない。ソニー や 任天堂 など、カリフォルニアに拠点を持つ日本企業の幹部や、現地で事業展開する起業家にも影響が及ぶ可能性がある。
興味深いのは、カウフマン氏が引用したスウェーデンの事例だ。「スウェーデンは20年前に包括的な富裕税を廃止し、資本逃避を回避して起業を促進した結果、現在は米国より50%多い億万長者を人口比で有している」
日本でも近年、スタートアップ支援策が議論される中、税制が起業家精神に与える影響は重要な論点となっている。カリフォルニアの動向は、日本の政策立案者にとって貴重な参考事例となるだろう。
実現可能性への疑問
皮肉なことに、この激しい論争の対象となっている法案は、実際に成立する可能性は極めて低い。ガビン・ニューサム 州知事が、法案が議会を通過した場合でも拒否権を行使すると既に表明しているからだ。
それでも今週末のデモ行進は予定通り実施される見込みで、カウフマン氏は「数十人の参加者」を見込んでいるという。ただし、肝心の億万長者たちの参加は確認されていない。
関連記事
米中AI競争は激化しているように見えるが、シリコンバレーと深圳の研究者たちは同じ論文を読み、同じポッドキャストを聴き、互いのアルゴリズムを採用している。対立の構図では見えない「もう一つの現実」を読む。
シリコンバレー史上最も注目される裁判、マスク対オルトマン訴訟の最終週。法廷で明かされた内幕と、AI業界の権力構造をめぐる深層を読む。
2023年感謝祭前夜、OpenAIのサム・アルトマンCEO解任劇の舞台裏。マスク対アルトマン裁判で初めて公開された証言が、AI業界最大の権力闘争の実態を明らかにする。
イーロン・マスクとサム・オルトマンの裁判で証言したシボン・ジリス。彼女の立場が照らし出すのは、シリコンバレーの権力構造と個人的関係の曖昧な境界線だ。
意見
この記事についてあなたの考えを共有してください
ログインして会話に参加