パキスタンがアフガニスタンの首都カブールを空爆、「全面戦争」宣言の背景
パキスタンとアフガニスタン間の軍事衝突が激化。テロ攻撃の報復として空爆を実施し「全面戦争」を宣言。両国関係の悪化が地域安定に与える影響を分析。
55人のパキスタン兵士が死亡、19の前哨基地が占拠された。アフガニスタンのタリバン政府が発表したこの数字が事実なら、両国間の軍事衝突は新たな段階に入ったことになる。
2月27日早朝、パキスタン軍はアフガニスタンの首都カブール、カンダハール、パクティア州に対して空爆を実施した。イスラマバードは「全面戦争」を宣言し、近年で最も深刻な軍事対立に発展している。
報復の連鎖が始まった経緯
この軍事衝突の発端は、2月上旬からパキスタン国内で相次いだテロ攻撃にある。
2月6日、イスラマバードのシーア派モスクで自爆テロが発生し、36人が死亡。続いてバジャウル地区で爆発物を積んだ車両が治安ポストに突入し、11人の兵士と1人の子供が犠牲となった。パキスタン当局は攻撃者がアフガニスタン国籍であると発表し、アフガニスタン政府に抗議した。
2月21日にはバンヌで治安部隊の車列を狙った自爆テロが発生し、2人の兵士が死亡。これらの攻撃を受け、パキスタンは先週末にアフガニスタン国内の武装組織の隠れ家とされる場所への空爆を開始した。
パキスタンが標的としているのは、主にパキスタン・タリバン運動(TTP)の拠点だ。TTPは2007年に結成され、アフガニスタンのタリバンと深いイデオロギー的・社会的結びつきを持ちながらも、組織的には別個の存在である。パキスタンは10年以上にわたってTTPの反政府活動に悩まされ続けている。
タリバン政府の「非対称戦争」という選択肢
アフガニスタンのタリバン政府には空軍がない。しかし軍事専門家らは、これが必ずしも劣勢を意味するわけではないと指摘する。
元パキスタン軍将軍のタリク・カーン氏は「アフガニスタンのシステムは代理勢力、ゲリラ戦、消耗戦を通じて軍事作戦を行う」と分析する。「消耗戦に引きずり込まれれば、核能力や航空戦力を持っていても負ける側になる。相手の土俵で戦うことになるからだ」
実際、27日午後にはパキスタンの3都市でドローン攻撃が発生し、パキスタン政府はタリバン政府の関与を示唆した。小型ドローンによる攻撃は撃墜されたものの、新たな戦争の形を予感させる出来事となった。
出口戦略の見えない対立
より深刻な問題は、両国とも明確な出口戦略を持たないことだ。
パキスタンは大統領、首相、そして政治的スペクトラム全体からの支持を得て、「アフガニスタン領土から発生するあらゆる攻撃に対応する」と誓約している。一方、タリバン政府にとって、カブールへの空爆を受けて後退することは、統治する国民や戦闘員に対して弱さを示すリスクがある。
シンガポールのS・ラジャラトナム国際研究大学院の研究者アブドゥル・バシット氏は「これは段階的なエスカレーションであり、一歩も後戻りしていない。我々は前進し続けるだけだ」と警告する。
昨年10月にはトルコとカタールの仲介で停戦合意が成立したが、その後のドーハとイスタンブールでの交渉は正式な合意に至らなかった。現在は、この対立を抑制する枠組みすら存在しない状況だ。
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