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人間のデータを使わないAI——次の知性はどこへ向かうのか
経済AI分析

人間のデータを使わないAI——次の知性はどこへ向かうのか

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NvidiaとIneffable Intelligenceが強化学習に特化したAI開発で提携。元DeepMind研究者が設立した英スタートアップが11億ドルの資金調達。AIの「次のフロンティア」とは何か、日本企業への影響も含めて考察します。

AIはもう、人間から学ぶことをやめようとしている。

2026年5月14日Nvidiaは英国のAIスタートアップ Ineffable Intelligence との技術提携を正式に発表しました。両社が目指すのは、人間が書いたテキストや画像ではなく、「経験」から自律的に学習するAIシステムの構築です。この動きは、ChatGPTに代表される現在の大規模言語モデル(LLM)とは根本的に異なるアプローチを示しており、AI開発の重心が静かに、しかし確実にシフトしつつあることを示唆しています。

11億ドルの種——何が起きているのか

Ineffable Intelligence2025年末に設立されたばかりの企業です。創業者はDavid Silver氏——ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ(UCL)の教授であり、かつてGoogle DeepMindの強化学習チームを率いた研究者です。彼はAIの歴史に名を刻む人物でもあります。囲碁AIの「AlphaGo」と「AlphaZero」の開発を主導したのが、まさにSilver氏だったからです。

設立からわずか数ヶ月で、同社は2026年4月11億ドル(約1,600億円)のシード資金調達を完了しました。これは、スタートアップの初期資金調達としては世界記録級の規模です。出資者にはSequoiaLightspeedNvidiaGoogle、そして英国政府のSovereign AI Fundが名を連ねています。

今回の提携では、NvidiaのエンジニアがIneffableのチームと共同で「強化学習を大規模に実行できるパイプライン」を構築します。使用するハードウェアはNvidiaの最新チップ「Grace Blackwell」と「Vera Rubin」プラットフォームです。

Nvidia CEO Jensen Huang氏はこう述べています。「AIの次のフロンティアは『スーパーラーナー』——経験から継続的に学習するシステムだ。」

「知っている」から「発見する」へ——技術的な転換点

現在のAI、たとえばChatGPTClaudeは、インターネット上の膨大な人間のテキストデータを学習することで、人間の知識を模倣します。これは「教師あり学習」や「人間のフィードバックによる強化学習(RLHF)」と呼ばれる手法に依存しています。

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Ineffableが追求するのは、これとは根本的に異なるアプローチです。Silver氏の言葉を借りれば、「研究者たちはAIの簡単な問題——人間がすでに知っていることをすべて学ぶ方法——はほぼ解決した。しかし今、私たちはより難しい問題に向き合う必要がある。それは、AIが自ら新しい知識を発見できるシステムをどう作るか、だ。」

強化学習は、試行錯誤を通じてエージェントが最適な行動を学ぶ手法です。囲碁や将棋のAIが人間を超えたのも、この手法によるものです。しかしIneffableが挑むのは、ゲームの枠を超えた「オープンエンドな学習」——現実世界の複雑な問題に対して、AIが自律的に解を探索し続けるシステムです。同社は「人間の言語とは異なる豊かな経験形式」を学習に使用し、「新しいモデルアーキテクチャとトレーニングアルゴリズムが必要になる可能性がある」と述べています。

「元DeepMind」の波——なぜ今、独立が加速するのか

Ineffableは孤立した事例ではありません。同じ5月14日、元Google DeepMindエンジニアのTim Rocktäschel氏が設立した Recursive Superintelligence6億5,000万ドルの資金調達を発表しました。また2026年3月には、MetaのAI責任者を離れたYann LeCun氏が創業した AMI Labs10億ドルを調達しています。

過去1年間で、OpenAIDeepMindAnthropicxAIの元研究者たちが次々と独立し、数億ドル規模の資金を調達しています。Periodic LabsHumans&などの新興AIラボも、その流れの中にあります。

この現象は何を意味するのでしょうか。ビッグテック企業の内部では、研究の自由度や意思決定のスピードに限界を感じた優秀な研究者たちが、外部資本を引き寄せながら独自の研究路線を追求する動きが顕著になっています。投資家側も、「次世代AIの主役は既存の大企業ではなく、こうした研究者主導のスタートアップかもしれない」という見立てのもと、リスクを取っています。

日本企業にとっての意味

この動きは、日本の産業界にとって他人事ではありません。

まず、半導体・AI投資の文脈で見ると、Nvidiaが強化学習インフラの構築に本腰を入れることで、Grace BlackwellやVera Rubinといった最新チップへの需要がさらに高まる可能性があります。ソフトバンクNvidiaと深い関係を持ち、日本国内にAIデータセンターへの大規模投資を進めている文脈では、この技術シフトは投資判断に直接影響し得ます。

次に、製造業・ロボティクスの視点です。強化学習は、工場の自動化や産業ロボットの制御において既に実績があります。トヨタファナックのような企業が採用する自律型ロボットシステムに、今後どのような影響を与えるかは注目に値します。人手不足が深刻化する日本の製造現場において、「経験から自律的に学ぶロボット」の実用化が加速するなら、その恩恵は大きいかもしれません。

ただし、懸念もあります。こうした最先端AI研究の中心が英国・米国・欧州に集中し、日本発のAI研究がグローバルな競争から取り残されるリスクです。産業技術総合研究所(AIST)や大学の研究機関が、こうした「ポストLLM」の研究潮流にどう対応するかは、今後の日本のAI競争力を左右する問いになるでしょう。

本コンテンツはAIが原文記事を基に要約・分析したものです。正確性に努めていますが、誤りがある可能性があります。原文の確認をお勧めします。

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