アメリカの理念は生き残れるか?ミネソタ州の連邦捜査官による市民殺害が問いかける民主主義の未来
マスクをした連邦捜査官がミネアポリスで2人のアメリカ市民を射殺。アメリカ建国の理念「命題的市民権」が試される時、日本は何を学ぶべきか。
2人のアメリカ市民が、自国の連邦捜査官によってミネアポリスの路上で射殺された。マスクで顔を隠した捜査官たちによる、前例のない暴力である。
トランプ政権は両方のケースで捜査官を擁護し、射殺された市民たちが「法執行の妨害」をしていたと主張している。しかし法執行の妨害が死刑に値する犯罪だったことは、アメリカ史上一度もない。
「命題的市民権」という実験の危機
アメリカは世界でも稀有な実験として建国された。人種や民族、言語ではなく、理念への忠誠によって国民を結びつける「命題的市民権」という概念だ。
エイブラハム・リンカーンは1858年の演説で、ドイツ、アイルランド、フランス、スカンジナビア諸国から最近到着した移民たちも、独立宣言の道徳的感情を信じることで「完全にアメリカ人」になると述べた。血統ではなく信念が、愛国心と自由を愛する人々の心を結ぶ「電気コード」なのだと。
しかし、この理念的結束は脆弱性も抱えている。人々が信じなくなれば、その力は蒸発してしまう。南北戦争時の南部連合の離脱がそうだったように、そして今まさに、アメリカの権利と前提を「厄介なもの」と見なす政治運動の台頭とともに、再び起きているかもしれない。
ミネソタ州で起きた「占領」への抵抗
国土安全保障省の準軍事作戦「メトロサージ作戦」に対するミネソタ州民の反発は、アメリカの理念の耐久性を証明している。ICE(移民・関税執行局)と国境警備隊の捜査官たちが州内に展開すると、地域住民のボランティアたちは驚くべき速さで結束した。
彼らは捜査官たちの移動を追跡・監視する権利を行使し、車や自宅から人々を連行する様子を記録した。食料配達や法廷への付き添いなど、逮捕・強制送還の脅威に直面する隣人たちを支援する活動も組織した。連邦捜査官たちはこれらの取り組みを妨害しようとしたが、住民たちはあまりにも機知に富み、慎重で、そして決意に満ちていた。
日本から見た「理念国家」の教訓
日本は血統と文化的同質性を基盤とする伝統的な国民国家として発展してきた。しかし、少子高齢化と労働力不足に直面する現在、外国人労働者の受け入れ拡大や多文化共生社会への移行が避けられない課題となっている。
アメリカの「命題的市民権」の実験は、日本にとって重要な示唆を与える。共通の価値観や理念によって多様な背景を持つ人々を結びつけることは可能なのか?そして、その理念が権力によって脅かされた時、市民社会はどう抵抗すべきなのか?
作戦の失敗を受けて、ドナルド・トランプは国境警備隊の「総司令官」グレゴリー・ボビーノをミネソタ州から撤退させ、元の職務に戻すよう命じた。彼は間もなく退職する予定だという。これは転換点なのか、それとも一時的な後退に過ぎないのか。
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