WHOがアメリカの資金提供によるワクチン実験を「非倫理的」と非難
WHOがアフリカでの新生児ワクチン実験を非倫理的と批判。ケネディ保健長官下のCDCが資金提供した研究の背景と波紋を分析
ギニアビサウの新生児病棟で、ある母親が我が子の未来を案じていた。生まれたばかりの赤ちゃんが、確立されたB型肝炎ワクチンを接種できるかどうかが、研究プロトコルによって決まるからだ。
世界保健機関(WHO)は2月14日、このアメリカ資金による研究を「非倫理的」と強く非難する公式声明を発表した。この研究は、安全性が確立されたB型肝炎ワクチンを一部の新生児に意図的に与えないという設計になっている。
問題となった研究の詳細
問題の研究は、疾病管理予防センター(CDC)が160万ドルをデンマークの研究者らに提供したものだ。この資金提供は、反ワクチン派として知られるロバート・F・ケネディ・ジュニア保健長官の下で決定された。
WHOの声明によると、この研究は「公開されている情報に基づく限り、確立された倫理的・科学的原則と一致しない」とされている。具体的には、既に安全性と有効性が証明されているB型肝炎ワクチンを一部の新生児グループに与えないことで、これらの子どもたちを不必要なリスクにさらすという点が問題視されている。
研究提案は競争入札ではなく、研究者側からの非公募提案として採択された。この異例の手続きも、専門家らの間で疑問視されている。
医療倫理の根本的問題
現代の医療研究倫理では、既に有効な治療法が存在する場合、それを意図的に与えないプラセボ対照試験は原則として禁止されている。これは第二次世界大戦後に確立されたニュルンベルク綱領やヘルシンキ宣言といった国際的な医療倫理規範に基づいている。
B型肝炎は特に新生児にとって深刻な感染症で、慢性化すると肝硬変や肝がんのリスクが高まる。WHO推奨のワクチン接種により、これらのリスクを大幅に減らすことができる。
日本の医療倫理専門家は「このような研究設計は、日本の医療倫理審査では絶対に承認されない」と指摘する。日本では新生児へのB型肝炎ワクチン接種が定期接種として確立されており、今回の研究のような設計は考えられないという。
政治的背景と波紋
今回の資金提供決定の背景には、ケネディ・ジュニア保健長官の就任がある。彼は長年にわたってワクチンの安全性に疑問を呈してきた人物として知られている。
保健専門家らは、今回の決定がアメリカの公衆衛生政策における大きな方向転換を示すものとして懸念を表明している。特に、科学的コンセンサスに基づかない研究への公的資金投入は、国際的な信頼失墜につながる可能性が指摘されている。
一方で、研究支持者らは「既存のワクチンの長期的影響をより詳しく調べる必要がある」と主張している。しかし、WHOをはじめとする国際機関は、そのような研究であっても倫理的な手続きを踏むべきだと強調している。
国際協力への影響
今回の件は、国際的な公衆衛生協力にも影を落としている。アフリカ諸国での医療研究には、植民地時代の負の歴史もあり、現地コミュニティの信頼獲得が重要な課題となっている。
日本の国際協力機構(JICA)関係者は「このような倫理的問題のある研究は、アフリカ諸国における国際的な医療支援全体への不信を招く恐れがある」と懸念を示す。日本もアフリカ諸国での保健医療支援を積極的に行っており、今回の件が与える影響を注視している。
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