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軍の教育から排除された研究者が語る「文民統制の危機」
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軍の教育から排除された研究者が語る「文民統制の危機」

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米空軍大学への講演招待を直前にキャンセルされた安全保障研究者コリ・シェイク氏。ヘグセス国防長官の下で進む軍の政治化は、250年かけて築かれた米国の文民統制の伝統を揺るがしているのか。

250年かけて築かれた伝統が、いま静かに侵食されているかもしれない。

安全保障研究者のコリ・シェイク氏は昨年5月、米空軍の上級将校養成機関である空軍大学(Air War College)で講演を行い、好評を博した。その実績から今年度も招待を受けていたが、先週、突然「来なくてよい」と告げられた。大学の親機関であるエア・ユニバーシティの広報担当者はこう説明した。「政府機関の閉鎖を受けて学術スケジュールを調整した結果、ゲスト講義を組み込む余地がなくなった」。

しかしシェイク氏は、その説明を額面通りには受け取れなかった。

ヘグセス長官が変えた「空気」

ピート・ヘグセス国防長官の下、国防総省は軍の教育機関に対して明確なイデオロギー的基準を適用し始めている。「反米感情と軍への軽蔑を製造する工場」と名指しした複数の名門大学との学術提携を打ち切り、ウェストポイント陸軍士官学校では前バイデン政権下の官僚の教授職を取り消した。さらに各士官学校の図書館から「分断的概念やジェンダーイデオロギーを推進する」書籍を撤去し、内容を理由に一部の授業を廃止するよう命じた。

シェイク氏が注目するのは、こうした明示的な指令よりも、その「空気」だ。「アフガニスタンでのオバマ政権時代の交戦規定の厳格化と似ている」と彼女は言う。上位の指揮官が新たな基準を設定すると、部下はその基準を違反することを恐れ、正式な指令が求める以上に先回りして従ってしまう。キャンセルの決定が政治的だったかどうかは証明できない。だが、そのような決定が「あり得る」と感じさせる環境が生まれていること自体が問題なのだ。

ワシントンからグラントまで:文民統制の250年

シェイク氏が本来講演するはずだった内容は、米国の文民統制の歴史だった。その内容は、今日の状況を理解するうえで驚くほど示唆に富んでいる。

建国の父たちが最も恐れたのは、強大な常備軍による政府の乗っ取りだった。独立宣言には軍の脅威への不満が明記され、連邦主義者論文集の85本のうち13本が直接この問題を扱っている。憲法の批准には、連邦政府による軍事力行使を制限する修正第2条・第3条が不可欠だった。

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この恐怖の国が、なぜ軍を「民主主義の守護者」と見なすようになったのか。その鍵を握るのがジョージ・ワシントンの姿勢だ。大陸軍司令官として、ワシントンは議会に命令を下すのではなく、懇願し続けた。戦後、彼は議会の前で公式に指揮権を返上し、「長らく私が命令を受けてきたこの崇高な機関に、愛情を込めて別れを告げる」と述べた。この姿勢が、のちに軍の職業的倫理として結晶化していく規範を確立した。

最も複雑な試練を乗り越えたのがユリシーズ・グラントだ。1867〜68年の憲法的危機において、アンドリュー・ジョンソン大統領は陸軍総司令官を兼務するグラントを陸軍長官に任命しようとした。議会はグラントに禁固5年・1万ドルの罰金を警告し、ジョンソン大統領は「自分が服役し罰金を払う」とまで言った。グラントは大統領ではなく法律に従うことを選んだ。平時においては、議会の権威が行政府に優先するという先例がここに確立された。

「政治の小道具」にされる軍

20世紀以降、文民統制への挑戦は著しく減少した。第一次世界大戦中のウィリアム・シムズ提督によるウィルソン大統領への命令違反、朝鮮戦争中のダグラス・マッカーサー将軍によるトルーマン大統領の戦略への公然たる反発——いずれも文民側が容易に優位を保った。

だが今日の問題は、軍が文民に反抗することではない。文民の政治家が軍を「正統性の小道具」として利用することだ。バイデン前大統領は2022年の民主主義に関する演説に制服姿の海兵隊員を後ろに立たせた。トランプ大統領は軍の聴衆に選挙演説を行い、党派的活動への参加を促した。民主党議員たちは軍に「違法な命令には従うな」と呼びかける動画を公開したが、これは法への遵守そのものを政治的行為に見せてしまうという逆説を生んだ。

クアンティコに数百人の軍幹部を集めてヘグセス長官とトランプ大統領が政治集会さながらの演説を行った際、将官たちは命令に従って出席したが、政治的なプログラムの間、全員が無言で着席し続けた。この「プロとしての沈黙」は、米軍の職業的倫理の深さを示している。しかしシェイク氏は警告する。「軍は私たちの熱狂した政治に引きずり込まれ続ければ、長くは免疫を保てない」と。

日本への視点:「自衛隊の政治的中立」は盤石か

この問題は、日本にとっても他人事ではない。自衛隊は憲法第9条のもとで厳格な文民統制の原則を維持してきた。しかし近年、防衛費のGDP比2%への倍増、反撃能力の保有、日米同盟の強化といった政策転換が相次ぐ中、自衛隊の役割と政治との距離感は微妙に変化しつつある。

米国の事例が示すのは、文民統制の侵食が必ずしも「クーデター」のような劇的な形で起きるわけではないということだ。むしろ、教育の内容が変わり、人事が政治的な基準で行われ、軍が政治的メッセージの「舞台装置」として使われる——そうした静かな変化の積み重ねによって起きる。

防衛省や自衛隊の幹部養成教育において、政治的に中立な歴史研究や批判的思考がどのように扱われているか。日本社会はこの問いを真剣に考える必要があるかもしれない。

本コンテンツはAIが原文記事を基に要約・分析したものです。正確性に努めていますが、誤りがある可能性があります。原文の確認をお勧めします。

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