「自分で取りに行け」トランプ氏、同盟国に石油自衛を要求
トランプ大統領がホルムズ海峡封鎖を巡り、英仏などの同盟国に「米国から買うか、自分で取りに行け」と要求。NATO亀裂が深まる中、日本のエネルギー安全保障にも深刻な問いが突きつけられている。
日本が輸入する原油の約8割が通過するホルムズ海峡が、今、事実上の封鎖状態に置かれている。
何が起きているのか
2026年3月31日、ドナルド・トランプ米大統領はソーシャルメディア「Truth Social」に異例の投稿をした。「ホルムズ海峡のせいで燃料が手に入らない国々へ。提案が2つある。①米国から買え。在庫は十分ある。②少しは勇気を出して、海峡に行き、自分で取れ」。
名指しされたのはイギリスだった。トランプ氏は、英国が米国によるイラン攻撃作戦への参加を拒否したことへの不満を明確に示した。さらに別の投稿ではフランスが軍需物資を積んだ米軍機の自国領空通過を拒んだとして、「米国は絶対に忘れない」と警告した。
背景にあるのは、現在進行中の米国・イスラエルによるイラン空爆作戦だ。イランは対抗措置としてミサイルと無人機によるホルムズ海峡への攻撃を継続しており、世界の石油供給量の約5分の1を担うこの海路は事実上機能不全に陥っている。ピート・ヘグセス国防長官はペンタゴンの記者会見で「米海軍だけの問題ではない。世界各国がこの重要な航路の確保に貢献すべきだ」と述べた。
トランプ氏はウォール・ストリート・ジャーナルの報道を受けて、海峡が依然封鎖されていても米軍の作戦を終結させる意向を示しているとも伝えられた。ニューヨーク・ポスト紙のインタビューでは「米軍撤退後、海峡は自動的に開通すると思う。イランはもう力を持っていない」と述べ、残された問題は同盟国が自ら解決すべきだとの立場を鮮明にした。
なぜ今、これが重大なのか
トランプ氏の発言は単なる感情的な言葉ではなく、戦後の国際秩序を支えてきた「米国による公共財としての海上安全保障」という概念そのものへの疑問符だ。
今月初め、トランプ氏はホルムズ海峡の安全確保への協力を拒んだNATO加盟国を「臆病者」と呼び、「米国なきNATOは張り子の虎だ」と述べた。今回の発言はその延長線上にある。同盟国への安全保障提供を「取引」として捉えるトランプ外交の本質が、かつてなく露わになった瞬間と言えるかもしれない。
日本にとってこの問題は対岸の火事ではない。韓国政府が26.2兆ウォン規模の補正予算を組んで中東緊張の経済的影響に対応しようとしているように、エネルギー輸入依存度の高いアジア諸国は静かに、しかし確実に打撃を受けている。大韓航空が緊急経営体制に入り、LGケムがロシア産ナフサの確保に動いているという報道は、サプライチェーンの再編が既に始まっていることを示している。
各方面の視点
イギリスやフランスの立場から見れば、今回の要求は受け入れがたい。イランとの外交チャンネルを維持してきた欧州各国にとって、米国主導の軍事作戦への参加は国内政治的にも外交的にも大きなコストを伴う。「自衛のために海峡に行け」という言葉は、国際法上の複雑な問題も孕んでいる。
一方、アメリカの国内世論の一部は、長年にわたって世界の海上安全保障を単独で担ってきた米国の「疲弊」に共感を示すかもしれない。「なぜ米国の若者が、欧州や日本のためにエネルギー航路を守らなければならないのか」という問いは、決して無視できない声だ。
そして日本の視点。日本はエネルギーの大部分を中東に依存しながら、憲法上の制約と日米同盟の枠組みの中で、軍事的関与の範囲を慎重に定めてきた。今回の事態は、そのバランスが問い直される局面を作り出している。自衛隊の海外派遣能力、エネルギー備蓄の水準、米国以外のエネルギー調達先の多様化——これらは今後の政策議論で避けて通れないテーマになるだろう。
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