「決定的な数日間」——イランとの戦争、地上侵攻の現実
ヘグセス米国防長官は「今後数日間が決定的だ」と述べ、イランへの地上侵攻を含む全選択肢を排除しないと警告。中東緊張が日本経済・エネルギー安全保障に与える影響を多角的に分析する。
原油価格が1バレル100ドルを超え、円相場が17年ぶりの安値を記録した今、日本のサラリーマンが毎朝目にするガソリンスタンドの価格表示は、遠い中東の戦場と静かにつながっている。
2026年3月31日、ピート・ヘグセス米国防長官はワシントンのペンタゴンで記者会見を開き、米・イスラエル連合によるイランへの軍事作戦について「今後数日間が決定的になる」と述べました。統合参謀本部議長のダン・ケイン大将とともに登壇したヘグセス長官は、イランが和平交渉に応じなければ「さらに強度を上げた軍事作戦を継続する」と明言しました。
「15の選択肢」——地上侵攻は絵空事ではない
会見で最も注目を集めたのは、地上部隊投入に関する発言です。ヘグセス長官は「イランに地上部隊を送り込む方法が15通りある」と述べ、具体的な内容は明かさなかったものの、その可能性を明確に示しました。
「我々はいかなる選択肢も排除しない」——この一言は、単なる外交的な脅しではありません。ペンタゴンはすでに「大統領に最大限の選択肢を与える」という名目で、数千人規模の追加部隊を中東地域に展開済みです。作戦開始からわずか1か月での大規模増派は、米軍の本気度を示しています。
一方、ヘグセス長官はイラク・アフガニスタン戦争の「教訓」にも言及しました。「トランプ大統領はその過ちを繰り返さない」という言葉には、泥沼化した地上戦への警戒感と、それでも選択肢として残すという複雑な意図が込められています。作戦の期間については「4〜6週間、あるいは6〜8週間」という幅のある表現にとどめ、「目標を達成するために正確な期間は明かさない」と述べました。
ホルムズ海峡——「日本の問題でもある」
ヘグセス長官の発言の中で、日本にとって特に重要な部分があります。ホルムズ海峡の安全確保について「エネルギー輸入をこの海峡に依存する国々も貢献すべきだ」と述べたことです。「これは米国だけの問題ではない」という言葉は、日本を含むアジア諸国への明確なメッセージと受け取れます。
ホルムズ海峡は、日本が輸入する原油の約9割が通過する生命線です。韓国ではソウル株式市場が4%超下落し、ウォンが17年ぶりの安値を記録。韓国航空が緊急経営体制に入り、LGケムがロシア産ナフサの確保に動くなど、隣国ではすでに実体経済への影響が出始めています。日本も無縁ではありません。
トヨタやソニーなどの製造業は、エネルギーコストの上昇と円安の二重苦に直面しています。韓国政府が26.2兆ウォン規模の補正予算を編成したように、日本政府も何らかの対応を迫られる可能性があります。
国際社会の視線——「アメリカだけが決める戦争」への疑問
ヘグセス長官は「トランプ大統領がずっとリードしてきた」と述べましたが、この言葉は国際社会に複雑な印象を与えています。
国連や欧州諸国からは、国際的な合意なしに進む軍事作戦への懸念が示されています。特に、地上侵攻の可能性が現実味を帯びる中で、「誰がこの戦争の終わり方を決めるのか」という問いは避けられません。イラン側は依然として交渉に応じる姿勢を明確にしておらず、「ミサイルを撃ち続けるが、撃ち落とされるだけだ」というヘグセス長官の発言が示すように、消耗戦の様相も呈しています。
日本政府は現時点で公式なコメントを控えていますが、日米同盟の観点から、ホルムズ海峡の安全確保への貢献を求められる場面が近づいているかもしれません。集団的自衛権の行使容認以降、日本の安全保障政策の選択肢は広がりましたが、それが試される局面が来る可能性があります。
記者
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