関税は「貿易」ではなく「安保」の道具になったのか
トランプ政権がEUへの自動車関税を15%から25%に引き上げ。韓国も同様の合意を抱え警戒を強める。関税が貿易政策を超え、安全保障の交渉カードとなりつつある構造を読む。
ワシントンが関税を「値札」ではなく「脅し状」として使い始めたとしたら、どの国も安全ではない。
トランプ大統領は現地時間5月2日、EUからの自動車・トラックに対する関税を、昨年の合意で設定された15%から25%へ引き上げると発表した。引き上げの理由として表向きは「EUが合意を履行していない」と説明したが、外交筋の間では別の解釈が広がっている。ホルムズ海峡の安全確保に向けた米国の要請——具体的には商船護衛のための軍艦派遣——をEUが拒否したことへの「報復」ではないかという見方だ。
ソウルが静かに緊張する理由
このニュースが東京だけでなくソウルを揺らしているのには、明確な理由がある。韓国は昨年、米国との間で自動車関税を25%から15%に引き下げる合意を結んだ。EUが結んだ合意と構造が酷似しているのだ。
青瓦台(韓国大統領府)の当局者は5月3日、「関連動向を注視し、わが国への潜在的影響を分析した上で対応する」と述べるにとどめた。言葉は穏やかだが、その慎重さの裏に走る緊張は隠しきれない。当局者はさらに「既存の韓米合意における利益バランスの維持と、他国より不利にならない待遇の確保という原則に基づいて対応する」と付け加えた。外交文書のような言い回しの中に、「EUと同じ扱いを受けたくない」という切実な本音が透けて見える。
さらに状況を複雑にするのが、トランプ氏がホルムズ海峡問題で韓国を名指しした点だ。「米軍が朝鮮半島を守っているにもかかわらず、韓国は協力的でない国の一つだ」と発言しており、貿易と安全保障が一体の交渉テーブルに乗せられつつあることを示唆している。
関税が「安保の通貨」になる日
ここで問題の本質が見えてくる。今回のトランプ政権の動きが示すのは、関税が純粋な経済政策の道具から、同盟国への行動変容を促す「安全保障の通貨」へと性格を変えつつあるという構造変化だ。
EUへの関税引き上げ前、レートは27.5%だった。昨年の合意で15%に下がり、今回また25%へ戻る。この数字の上下動は、単なる貿易摩擦ではなく、米国が同盟国に求める「負担分担」の度合いを数値で示したものとも読める。
日本にとってこれは対岸の火事ではない。トヨタやホンダをはじめとする日本の自動車メーカーは米国市場に深く依存しており、日米間でも同様の関税交渉が続いている。仮に日本がホルムズ海峡や台湾海峡をめぐる米国の安保要請に対して「不十分」と判断された場合、関税というカードが切られる可能性は排除できない。
異なる立場から見えるもの
韓国政府の立場は難しい。米国との同盟を維持しながら、中国という最大の貿易相手国との関係も壊せない。ホルムズ海峡への軍艦派遣は、中東での存在感を高めることを意味し、中国を刺激するリスクを伴う。「どちらにも敵対しない」という綱渡りは、関税という経済的圧力によってより困難になっている。
EUの視点から見れば、今回の関税引き上げは「ルールに基づく国際秩序」への挑戦と映る。WTOの枠組みを超えた一方的な措置であり、欧州は報復関税の検討を示唆している。貿易戦争が再燃すれば、世界のサプライチェーンに連鎖的な影響が及ぶ。
一方、トランプ政権を支持する立場からは、「フリーライダー問題の是正」という論理が成立する。米国が莫大なコストを負担して世界の安全保障を支えているのに、その恩恵を受ける国々が応分の負担をしないのは不公平だという主張だ。この論理自体は、党派を超えて一定の共感を集めてきた議論でもある。
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