イラン攻撃は「泥沼」への道か?トランプの過信が招く危険
トランプ政権がイランへの軍事攻撃を検討する中、専門家は過去の成功体験が今回は通用しない理由を分析。イランの弱体化が逆に交渉を困難にする逆説とは。
過去の成功体験は、時として最大の罠となる。ドナルド・トランプ大統領がイランへの軍事攻撃を検討する今、ワシントンの外交専門家たちが警鐘を鳴らしているのは、まさにこの理由からだ。
「狼少年」と化した警告
2018年、トランプがエルサレムへの米国大使館移転を決断した際、国務省の専門家たちは大規模な抗議活動と暴力の発生を予測した。しかし、何も起こらなかった。2025年6月、イランの核施設への攻撃でも同様だった。今年1月のベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領失脚でも、専門家の「地域混乱」予測は外れた。
こうした経験から、トランプは今回のイラン攻撃警告も「大げさな懸念」と捉えている。だが、大西洋評議会のネイト・スワンソン氏(元国家安全保障会議イラン担当)は明確に警告する:「今回は違う」。
弱体化が招く逆説
イランの現状は確かに脆弱だ。代理民兵組織は無力化され、核施設は破壊され、防空システムは穴だらけ。しかし、この弱体化こそが問題なのだ。
最高指導者アリ・ハメネイにとって、弾道ミサイル計画は政権維持の最後の砦だ。イスラエルと米国がこれを標的にし続けるなら、イランは「より攻撃的」になるしかない。追い詰められた動物ほど危険なものはない。
元米外交官のジョン・リンバート氏の言葉が示唆的だ:「イランは圧力には屈しない。大きな圧力にのみ屈する」。1988年、8年間のイラン・イラク戦争で国家存亡の危機に直面したとき、イランは屈辱的な停戦を受け入れた。しかし今回、トランプが求める「核濃縮とミサイル計画の完全放棄」は、体制の終焉を意味する。ハメネイが自らの死を選んでも応じない要求だ。
交渉の温度差
先週ジュネーブで開かれた米イラン交渉の構図が、両国の姿勢を物語る。イラン側はアッバス・アラグチ外相以下、技術専門家チームを派遣し、ウラン輸出の詳細や制裁解除の具体的手続きを議論する準備を整えた。
一方、トランプは特使のスティーブ・ウィットコフ氏と義理の息子ジャレッド・クシュナー氏のわずか2人を派遣。技術的詳細には関心がない。求めるのは「歴史的和平」という象徴的勝利だけだ。
日本への含意
中東の不安定化は、エネルギー安全保障を重視する日本にとって深刻な懸念材料だ。ホルムズ海峡封鎖のリスクが高まれば、原油価格の急騰は避けられない。また、日本企業の中東事業にも影響が及ぶ可能性がある。
特に注目すべきは、イランが「非対称戦争」に転じた場合の影響だ。サイバー攻撃や海上での嫌がらせ行為が常態化すれば、日本の海運業界や商社にとって新たなリスク要因となる。
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