ファーウェイの「静かな失速」が示すもの
ファーウェイの2025年クラウド収益が外部顧客向けに3.5%減少。自社開発AIチップ「Ascend」は競合に追いつけるか。米中技術覇権争いの最前線を読み解く。
世界が「AIバブル」に沸く中、中国最大の技術企業の一つが静かに足踏みしている。
ファーウェイは2026年3月、2025年の通期決算を発表した。総収益は8,809億元(約18兆円)と前年比2%増、純利益は680億元で約8%増と、数字だけ見れば堅調に映る。しかし、その内訳を掘り下げると、別の景色が見えてくる。
「成長」の裏に潜む構造的な課題
最も注目すべきは、クラウドコンピューティング事業における外部顧客向け収益が3.5%減少し、321.6億元(約6,600億円)にとどまった点だ。内部顧客を含めた全体では4.8%増となっているが、これは自社グループ内の取引に支えられた数字であり、市場競争力を示す外部収益の落ち込みは看過できない。
比較すると、その差は鮮明だ。中国最大のクラウド事業者であるアリババは2025年のクラウド部門収益が36%増。テンセントのビジネスサービス収益も22%増を記録した。世界全体でも、クラウドインフラへの支出は2025年第4四半期に29%増と、6四半期連続で20%超の成長を続けている。ファーウェイだけが、この波に乗れていない。
ICTインフラ部門(自社開発AIチップ「Ascend」を含む主要事業)の収益成長率も、2024年の4.9%から2025年は2.6%へと鈍化した。研究開発費は過去最高の1,923億元(売上高比21.8%)を投じているにもかかわらず、だ。
なぜ今、この数字が重要なのか
背景を理解するには、米国の輸出規制という文脈が欠かせない。米国はエヌビディアの最先端チップを中国企業へ販売することを制限しており、ファーウェイはその「代替品」として自社開発のAscendチップを育ててきた。北京政府も技術自給自足を強く推進している。
しかし現実は複雑だ。バイトダンス(TikTokの親会社)はマレーシアのデータセンター計画を通じて、パートナー経由で高性能エヌビディアチップへのアクセスを拡大していると報じられている。さらに、バイトダンスとアリババがファーウェイの新型AIチップを発注する計画があるとも伝えられており、皮肉にも「制裁の受益者」であるはずのファーウェイが、制裁を迂回しようとする企業からの需要を取り込む構図になっている。
つまり、ファーウェイの苦戦は単なる技術力の問題ではない。中国のAI産業全体が、制裁という制約の中で「どのチップを使うか」という選択を常に迫られているという、より深い構造的問題を映し出している。
日本企業にとっての「他山の石」
この状況は、日本の製造業・技術企業にとっても無縁ではない。ソニーやキヤノン、東京エレクトロンなどの企業は、中国市場への依存と米国の輸出規制リスクの間で常にバランスを取ることを求められている。ファーウェイが直面している「研究開発に巨額を投じても、エコシステムの壁を越えられない」という現実は、技術的孤立がもたらすコストを如実に示している。
一方、消費者部門でもファーウェイは課題を抱える。スマートフォン出荷台数では中国国内首位を維持したものの(前年比1.7%増)、2025年後半にアップルの「iPhone 17」が発売されると市場シェアを奪われた。消費者部門の成長率は2024年の38.3%から2025年は1.6%へと急減速した。電気自動車関連の「インテリジェント・オートモーティブ」部門は72%増と高成長を維持しているが、これも2024年の474%増からの大幅な鈍化だ。
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