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世界最大の祭典を、なぜアメリカは電車で行けないのか
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世界最大の祭典を、なぜアメリカは電車で行けないのか

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2026年W杯決勝が開かれるメットライフ・スタジアムへの交通問題を軸に、米国の公共交通インフラの老朽化と過少投資の実態を読み解く。日本の鉄道大国としての視点から考える。

往復98ドル。それが、世界最大のスポーツイベントの決勝戦に向かうための電車賃です。しかも当初は150ドルでした。東京から新幹線で大阪まで行ける金額で、ニュージャージー州の沼地にあるスタジアムまで片道45分を往復するのです。

沼地のスタジアムと、8万人の移動問題

2026年FIFAワールドカップの決勝戦は、今夏、ニュージャージー州の湿地帯に建つメットライフ・スタジアム(大会期間中は企業名を使えないため「ニューヨーク・ニュージャージー・スタジアム」と呼ばれます)で開催されます。マンハッタン中心部から約14キロ離れたこの会場に、決勝当日だけで推定8万人のファンが集まる見込みです。

問題は、どうやってそこへ行くか、です。

選択肢は限られています。自家用車を使う場合、近隣のショッピングモールの駐車場代として225ドルを支払う必要があります。シャトルバスはニューヨーク州のキャシー・ホークル知事の介入で当初の80ドルから20ドルに引き下げられましたが、一部は黄色いスクールバスで運行されます。そしてライドシェアアプリは、需要急増による価格高騰が避けられないでしょう。

残る選択肢が、NJトランジットの鉄道です。ただし、この路線は普段ほとんど使われておらず、大規模イベント時の混雑対応に実績がありません。2014年のスーパーボウルでは同じ会場で大混乱が発生し、交通機関が機能不全に陥りました。2019年のレッスルマニアでも、数千人のファンが暗闇の中でNJトランジットの列車を何時間も待ち続けるという事態が繰り返されました。

「PTSD」と語ったCEOの本音

NJトランジットのCEO、クリス・コルリ氏は今年4月の記者会見で、この運賃設定の背景を率直に説明しました。1試合あたりの輸送コストは約600万ドル。人件費、警備費、そして50両の車両整備費(新しい車輪、車軸、エアコンユニットの購入を含む)が必要で、それを4万人の乗客数で割ると1人あたり150ドルになる、という単純な計算です。

コルリ氏は2014年のスーパーボウル時の混乱を「PTSD(心的外傷後ストレス障害)を引き起こした」と表現しました。老朽化した設備を抱えるまま大勢の乗客を運ぼうとすれば、また同じことが起きる。そのリスクを避けるためにコストをかける、というのが同氏の論理です。

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しかし、この説明に異論を唱えたのがFIFAでした。大会から110億ドルもの収益を見込む同団体は、高額運賃が「地域全体の経済的恩恵と遺産を損なう」と批判。ニュージャージー州のミキ・シェリル知事は逆に、FIFAこそが運賃を補助すべきだと反論しました。そのやり取りの中で運賃は最終的に98ドルまで引き下げられましたが、それでも通常運賃(13ドル未満)の7倍以上です。

一方、フィラデルフィアではSEPTA(フィラデルフィア交通局)が通常運賃の2.90ドルでスタジアムへの直通サービスを提供します。ペンシルベニア州のジョシュ・シャピロ知事がこれを誇らしげに発表したのは、NJトランジットの状況との対比を意識してのことでしょう。ただし、SEPTAも1時間に1万5千人しか輸送できないのに、1試合あたり3万人の利用が見込まれており、余裕があるわけではありません。

アメリカの鉄道が映し出すもの

今回の問題は、ニュージャージー州だけの話ではありません。米国内の11都市で開催されるW杯の会場のうち、スタジアムへの直通鉄道アクセスがある都市はほとんどありません。ダラスは高額駐車場かコミュータレールとシャトルバスの乗り継ぎ、カンザスシティはシャトルバスのみ、ロサンゼルスは指定のメトロ降車地点からシャトルバスに乗り換える方式です。ヒューストンでは軽鉄道が通じていますが、関連路線の運行頻度は12分に1本。米国でアムトラック駅がスタジアムに近いのはシアトルとサンフランシスコの2都市だけです。

レール・パッセンジャーズ・アソシエーションのジム・マシューズ会長は、「世界の注目が集まるこの瞬間に、馬鹿げた高額料金を設定している。何十年にもわたって輸送能力への投資を怠ってきた結果がこれだ」と断言します。

欧州のサッカーファンたちは、なぜこのスタジアムが都市中心部から遠く離れた場所に建てられたのか、とSNS上で疑問を呈しています。答えは簡単には出てきません。それは「アメリカがそういう国だから」という、長年の自動車依存文化の帰結でもあるからです。

日本の目から見ると

ここで、日本の読者には少し立ち止まって考えていただきたいことがあります。

日本は世界有数の鉄道大国です。JR東日本の新幹線は年間1億人以上を運び、遅延は平均1分以内。2002年の日韓W杯でも、新幹線や在来線が大勢のサポーターを各地のスタジアムへ効率よく運びました。大阪万博や東京オリンピックなど、大規模イベントのたびに公共交通が「当たり前のように」機能する光景は、日本では特別なことではありません。

しかし、それは長年にわたる莫大なインフラ投資と、鉄道会社・自治体・国の連携があってこそです。米国では1950年代以降、連邦政府が高速道路網の整備に巨額の投資を行う一方で、公共鉄道への投資は相対的に軽視されてきました。その差が、今回のW杯で白日の下にさらされています。

日本も無縁ではありません。地方の鉄道路線の廃線問題、老朽化するインフラの維持コスト、少子高齢化による利用者減少——日本の鉄道が直面する課題は、米国とは異なる形ですが、同様に深刻です。「今は機能しているから大丈夫」という安心感が、長期的な投資判断を鈍らせるリスクは、どの国にも存在します。

本コンテンツはAIが原文記事を基に要約・分析したものです。正確性に努めていますが、誤りがある可能性があります。原文の確認をお勧めします。

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