アメリカ建国250年、その通知表は何点か
歴史家ヘザー・コックス・リチャードソンが語るアメリカの「再発明」サイクル。トランプ政権が民主主義の防護柵を壊した今、市民は何を取り戻せるのか。建国250年を迎える米国の自己採点を読み解く。
国家に通知表をつけるとしたら、あなたは何点をつけますか。
これは単なる修辞的な問いではありません。建国250周年を目前に控えたアメリカで、歴史家のヘザー・コックス・リチャードソンが真剣に向き合っている問いです。彼女はボストン・カレッジの歴史学教授であり、毎日数十万人が読む政治歴史ニュースレター「Letters from an American」の著者でもあります。
インタビューで問われた「アメリカの通知表」に対して、インタビュアーはB-/C+という評価を提示しました。多民族民主主義のモデルとして機能してきた点、学術・文化・スポーツにおける世界的影響力は評価に値する。一方で、資本主義が構造的に生み出す「永続する貧困層」や、国内外における不正義は減点要素だと。
この採点が示すのは、アメリカという国家への冷静な視線です。英雄譚でも悲劇でもなく、「まずまず及第点」という現実的な評価。そしてその評価が今、かつてなく試されています。
80〜90年ごとの「再発明」という歴史のリズム
リチャードソンが長年研究してきたのは、アメリカが危機に直面するたびに自己を作り直してきたパターンです。建国から南北戦争まで、南北戦争からニューディール政策まで、そしてニューディールから現代まで——おおよそ80〜90年のサイクルで、アメリカは新たな挑戦に応じて民主主義の形を更新してきました。
彼女は「再発明」という言葉には慎重です。「私が考えているのは、建国の理念は当初、適用される人々の範囲が限られていたが、その原則自体は拡張可能なものだった、ということです。西部開拓、産業化、グローバル化、核兵器の登場——そうした新しい挑戦に対応するたびに、私たちは民主主義をより多くの人々に広げてきた」と語ります。
では今は?「絶対に、そうした転換期にあります」と彼女は断言します。
その「再発明の種」はどこから生まれるのか。リチャードソンが注目するのは意外にも、政治ではなく芸術です。音楽、美術、新しい言語表現、ファッション——19世紀末の創造的爆発がそうであったように、社会変革の萌芽は想像力の領域から生まれると彼女は言います。そして同時に、市民が自国の歴史に立ち返り、過去の世代が民主主義のために行使した「主体性(エージェンシー)」を再発見することが、変革の原動力になると指摘します。
ここで彼女が引き合いに出したのが、2026年4月12日のハンガリーの選挙です。ヴィクトル・オルバーン首相に対して超多数の野党勢力が議会の支配権を奪取したこの選挙で、有権者たちは移民政策や経済政策での意見の違いを超えて「国を愛する」という共通の土台に立ち返りました。リチャードソンはこれを、1850年代の共和党結成、1890年代のポピュリスト運動、1930年代のニューディール連合と同じ構造の動きとして読み解きます。
トランプは「産物」か、それとも「異物」か
インタビューの核心は、ドナルド・トランプをどう位置づけるかという問いに移ります。彼は40年以上続いた右翼的言説の「産物」なのか、それともアメリカの政治システムそのものの欠陥を示す「異物」なのか。
リチャードソンの答えは明確です。「彼は少なくとも40年間の右翼的言説の産物です」。1965年の投票権法以降、人種差別的・性差別的な有権者が共和党に流入し、その票を取り込みながら「小さな政府」を志向するエリート層が権力を維持してきた。トランプはその構造を「反転」させました。減税を望む既存の共和党エスタブリッシュメントには目配せしながら、人種差別主義者や性差別主義者、「アメリカ・ファースト」派を前面に押し出した。
しかし彼女は、トランプが単なる既存の流れの延長ではないとも指摘します。「彼は民主主義を独裁制に変えただけでなく、個人崇拝的独裁制に変えました。権力を党のためでも側近のためでもなく、自分自身のために集中させようとしている。ある意味でファシズムをも超えた段階です」。
では、アメリカのシステム自体がトランプを生み出す構造的欠陥を持っていたのか。この問いに対してリチャードソンは「ノー」と答えます。「1960〜70年代以降、私たちの多くがボールを落とした(注意を怠った)のです」。リンドン・ジョンソン大統領の「偉大な社会」政策以降、障害者、高齢者、マイノリティの権利が認められ始めた。多くの人々がその進歩を当然のものと思い込み、自由民主主義を維持する努力を怠った。その空白に、「あなたたちこそが本当のアメリカを守っている」という物語を携えた急進右翼が入り込んだのです。
ローレン・ボーバート下院議員が2021年1月6日の朝、「これは1776年だ」とツイートした場面をリチャードソンは引用します。議事堂襲撃に向かう人々に「あなたたちこそ愛国者だ」と呼びかけたこの言葉は、40年かけて醸成された物語の凝縮でした。
「防護柵が壊れた」ことが、逆説的に市民を動かす
リチャードソンが最後に示すのは、逆説的な希望です。
2025年1月にトランプが再び就任して以降、民主主義の「防護柵」と多くの人が信じていたものが次々と取り払われました。それは危機です。しかし同時に、「自分は政治に関わる必要はない」と思っていた人々が「関わらなければならない」と気づき始めた転換点でもある、と彼女は言います。
「これは1850年代、1890年代、そしてそれ以降に私たちが見てきたものと同じです——民主主義を取り戻し、新しい条件に適応させる動きです」。
日本の読者にとって、この議論は遠い国の話ではないかもしれません。日本もまた、戦後民主主義の「当然視」が続いた時代の後、政治への無関心と投票率の低下という課題を抱えています。民主主義は、維持しようとする意志がなければ静かに形骸化する——アメリカの事例はその教訓を、やや激しい形で示しています。
本コンテンツはAIが原文記事を基に要約・分析したものです。正確性に努めていますが、誤りがある可能性があります。原文の確認をお勧めします。
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