「火曜日は橋の日だ」――トランプの言葉が戦争を変える
イランとの戦争が膠着する中、トランプ大統領はSNSで民間インフラへの攻撃を予告。大統領の言葉と行動が国際秩序に与える影響を多角的に読み解く。
「火曜日は発電所の日だ。橋の日だ。全部まとめてな。地獄を見せてやる――ただ見ていろ!アッラーに感謝を」
これは映画の台詞ではありません。2026年4月のイースターの朝、ドナルド・トランプ大統領が自身のSNSプラットフォーム「Truth Social」に投稿した文章です。現職のアメリカ大統領が、民間インフラへの攻撃を事前に、しかも自分が所有するSNSで予告する――国際政治の歴史においても、前例のない出来事です。
戦争の「今」――なぜトランプは追い詰められているのか
イランとの戦争は、当初トランプ政権が期待したような展開にはなっていません。アメリカとイスラエルの空爆によってイランの最高幹部の多くが死亡しましたが、イラン政府は依然として健在です。それどころか、ホルムズ海峡の支配を維持し続けており、戦略的には開戦時より優位に立っているとも言えます。4月7日現在、イランはアメリカが提示した45日間の停戦案を拒否し、永続的な停戦を条件とした対案を提示しましたが、トランプ大統領はこれを「不十分」と一蹴しました。
軍事的な損失も積み重なっています。イラン上空で撃墜されたF-15E戦闘機のパイロットは昨日救出されましたが、その救出作戦でMC-130J輸送機2機とMH-6ヘリコプター数機が失われました。さらにA-10攻撃機も別途撃墜されています。トランプ政権がイランの防空システムを「壊滅させた」と主張していた直後の出来事だけに、この損失の重みは軽くありません。
国防長官のピート・ヘグセスは、戦時中にもかかわらず陸軍参謀総長と最高司祭を解任。司法長官のパム・ボンディも先週解任されました。政権内部の動揺が、戦況の厳しさを間接的に物語っています。
言葉の暴走が持つ、現実的なリスク
「大統領らしくない発言」という批判はもはや過去のものです。問題は、その言葉が国際法、軍事戦略、そして外交の観点からどれほど危険かという点にあります。
民間の発電所や橋を標的にすることは、国際人道法に違反する可能性が高いとされています。過去にも国際法を無視したアメリカ大統領はいましたが、攻撃の意図を事前にSNSで公言した大統領は一人もいません。
戦略的な観点からも疑問符がつきます。イランに親米的な政権を樹立するためには、統治能力を持ち、かつアメリカと協力する意志のある勢力の存在が不可欠です。民間インフラへの攻撃――あるいはその脅迫だけでも――は、そうした勢力の台頭を難しくします。宗教的な殉教を厭わない指導者たちに対して、「地獄を見せる」という脅しがどれほど有効かも、疑わしいところです。
アトランティック誌のコラムニスト、トーマス・ライトは先週、次のステップとして地上戦の可能性を論じました。中東における過去のアメリカの軍事介入が長期的な泥沼化をたどってきた歴史を振り返るとき、この指摘は重く受け止める必要があります。
日本にとって、これは「遠い話」ではない
ホルムズ海峡は、日本が輸入する原油の約80〜90%が通過する海上交通の要衝です。イランとの戦争が長期化し、同海峡の封鎖や機雷敷設が現実のものとなれば、トヨタや新日本製鉄をはじめとする製造業、そして一般家庭のエネルギーコストに直結します。
2022年のロシアによるウクライナ侵攻後、日本はエネルギー安全保障の多角化を急ぎましたが、中東依存からの完全な脱却はまだ道半ばです。今回の危機は、その課題を改めて突きつけています。
また、日本は伝統的にイランとの独自の外交チャンネルを持ち、調停役を担ってきた歴史があります。2019年には安倍晋三元首相がイランを訪問し、ロウハニ大統領と会談しました。現在の石破茂首相がこの役割を果たせるか、あるいはアメリカとの同盟関係の中でその余地があるか――日本外交の真価が問われる局面かもしれません。
記者
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