Googleの新技術がメモリ株を揺さぶる
GoogleのTurboQuantがAIモデルのメモリ使用量を6分の1に削減できると発表。SK Hynix、Samsung、Micronなどのメモリ株が急落。長期的な半導体需要への影響と、日本市場への波及効果を多角的に分析します。
6分の1——この数字が、世界のメモリ市場を一時的に凍りつかせました。
2026年3月、Googleは「TurboQuant」と名付けた新しい圧縮技術を発表しました。大規模言語モデル(LLM)の実行に必要なメモリ量を最大6分の1に削減できるという研究成果です。発表から数日も経たないうちに、世界の主要メモリメーカーの株価が大きく下落しました。
何が起きたのか
3月中旬、SK HynixとSamsungの株価は韓国市場でそれぞれ約6%、約5%下落しました。日本のフラッシュメモリ大手であるKioxiaも約6%の下落を記録。米国市場ではMicronとSanDiskが先行して値を下げており、投資家の不安が太平洋を越えて連鎖した形です。
TurboQuantの核心は「KVキャッシュ(Key Value Cache)」の最適化にあります。AIモデルが過去の計算結果を再利用するために一時保存するこの領域を大幅に圧縮することで、同じ処理をより少ないメモリで実現できるとGoogleは主張しています。CloudflareのCEOであるMatthew Prince氏はこの研究を「GoogleのDeepSeek」と表現しました。昨年、中国のAI企業DeepSeekが効率化技術を発表した際に大規模な株価下落が起きたことを想起させる発言です。
「売り」は正しいのか
しかし、市場の反応を額面通りに受け取るべきではないという声も少なくありません。
半導体調査会社SemiAnalysisのメモリアナリスト、Ray Wang氏はCNBCに対してこう語っています。「ボトルネックを解消すれば、AIハードウェアはより高性能になります。モデルが強力になれば、それを支えるためにより優れたハードウェアが必要になる。メモリ使用量が増えることを避けるのは難しい」。
この見方は、過去の技術史とも符合します。ストレージが効率化されるたびに、人々はより大きなファイルを扱うようになりました。通信速度が上がれば、より高解像度の動画が標準になりました。効率化は需要を消滅させるのではなく、新たな需要を呼び込む——いわゆる「ジェボンズのパラドックス」が、ここでも働く可能性があります。
Quilter Cheviotのテクノロジー調査責任者Ben Barringer氏も「今回の売りは主に利益確定によるものだ」と分析します。「メモリ株はここ1年で非常に好調だった。Samsungは約200%、MicronとSK Hynixは300%超の上昇を記録している。投資家はすでに利益確定の理由を探していた」と指摘しました。
日本市場への視点
今回の動きで特に注目すべきは、Kioxiaの下落です。東芝のメモリ部門を源流に持つ同社は、NANDフラッシュメモリの世界的な供給者であり、日本の半導体産業の象徴的存在の一つです。Western Digitalとの統合交渉など、事業再編の動きが続く中での株価下落は、日本の半導体産業全体の先行き不透明感を高めます。
より広い文脈では、日本政府が国策として推進する半導体産業の復興戦略とも無関係ではありません。Rapidusによるロジック半導体の国内製造、TSMCの熊本工場誘致など、日本は半導体サプライチェーンへの再参入を急いでいます。AIの効率化がメモリ需要を抑制するのか、それとも拡大させるのか——この問いへの答えは、日本の産業政策の成否にも影響を与えかねません。
また、日本企業の視点からは「使う側」の恩恵も見逃せません。SonyやToyota、あるいは多くの製造業がAIを業務に組み込もうとしている中、モデルの実行コストが下がることは、AI導入の障壁を下げることを意味します。効率化は、メモリメーカーには逆風でも、AIの利用者には追い風です。
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