インド・イスラエル急接近が示す「民族主義インターナショナル」の台頭
モディ首相のイスラエル訪問は単なる外交転換ではない。民主主義の仮面を被った権威主義国家同士の新たな連携が、アジアの安全保障環境を根本から変える可能性を探る。
46%。これは現在、イスラエルの武器輸出に占めるインドの購入割合だ。かつてパレスチナ支持の急先鋒だった国が、なぜここまで立場を変えたのか。
歴史的転換点となったモディ訪問
2026年2月25日、ナレンドラ・モディ首相がイスラエルを訪問し、ベンヤミン・ネタニヤフ首相と包括的な防衛協力協定に署名した。さらにモディ首相はクネセト(イスラエル国会)で演説を行い、パレスチナへの言及をわずかな言葉にとどめる一方で、イスラエルへの賛辞を惜しまなかった。
この変化は驚くべきものだ。独立以来、インドは長らくパレスチナ問題において最も声高な支持者の一つだった。初代首相ジャワハルラール・ネルーは、ユダヤ人少数派が保護される世俗国家の創設を提唱し、イスラエル建国そのものに反対していた。
しかし、2014年にモディ政権が発足して以降、この方針は段階的に変化した。決定的な転換点は2023年10月7日のハマス攻撃後だった。ガザでの民間人犠牲者が増加し国際的な非難が高まる中、インドは国連決議で棄権を続け、事実上イスラエル側に立った。
ヒンドゥトヴァとシオニズムの共鳴
この急速な接近の背景には、単なる戦略的利益を超えた深いイデオロギー的親和性がある。
モディ首相が信奉するヒンドゥトヴァ思想は、インドを世俗的民主主義国家からヒンドゥー多数派のための国家へと変貌させようとする。この過程で、特にムスリム少数派を排除の対象としている。一方のネタニヤフ政権も、イスラエルをユダヤ人国家として強化し、パレスチナ人の権利を制限する政策を推進している。
両指導者は民族を血統と宗教で定義し、「真の国民」以外を侵入者と見なす世界観を共有している。クリストフ・ジャフルロのような専門家は、「10月7日以降、ヒンドゥトヴァ運動の指導者たちは、テロリストだけでなくムスリム全般を非難しながら、イスラエルとの連帯を表明した」と指摘する。
アジアの安全保障環境への影響
この新たな連携は、アジア太平洋地域の安全保障バランスに重要な意味を持つ。インドはクアッド(日米豪印戦略対話)の一員として、中国の台頭に対抗する「自由で開かれたインド太平洋」構想の重要なパートナーだった。
しかし、権威主義的傾向を強めるインドが、同様の性格を持つイスラエルとの関係を深めることで、この地域の民主主義的価値観に基づく連携に亀裂が生じる可能性がある。日本にとって、価値観外交を重視してきた対インド関係の再検討が迫られるかもしれない。
特に注目すべきは、両国が共有する「対テロ戦争」の論理だ。インドはカシミールでのムスリム住民に対する弾圧を、イスラエルはガザやヨルダン川西岸でのパレスチナ人への攻撃を、それぞれ「テロとの戦い」として正当化している。
「民族主義インターナショナル」の拡大
この現象は、専門家が「民族主義インターナショナル」と呼ぶ新たな国際的ネットワークの一部だ。表面的には矛盾して見えるこの概念は、各国の極右民族主義運動が既存のリベラル秩序に対抗するため、知識や戦術を共有し連携を深めていることを指す。
ヴィクトル・オルバンのハンガリーとドナルド・トランプの共和党の関係が西欧で注目されてきたが、インドとイスラエルの連携は地理的・歴史的対立が少ないため、より安定した協力関係を築ける可能性がある。
この流れは、人権や国際法への配慮が弱まる「力が正義」の世界秩序の到来を示唆している。バイデン政権がガザでのイスラエルの暴力に対して無力だったこと、そしてトランプ政権が既存の国際秩序を破壊していることが、この傾向を加速させている。
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