米軍の弾薬不足がイラン攻撃の現実性を問い直す
防衛専門家が指摘する米軍の弾薬不足問題。ウクライナ支援とイラン攻撃能力の両立は可能なのか。日本の防衛産業への影響も分析。
米軍がイランを攻撃するとしたら、最大の制約要因は政治的判断でも地理的距離でもない。弾薬の在庫だ。
Financial Timesの最新分析によると、ウクライナへの継続的な軍事支援により、米軍の精密誘導弾薬の備蓄は危険水域に達している。特にJASSM(Joint Air-to-Surface Standoff Missile)やトマホーク巡航ミサイルなど、イランの核施設攻撃に不可欠な長距離精密兵器の不足が深刻化している。
ウクライナ支援が生んだジレンマ
2022年2月以降、米国はウクライナに1,500億ドル相当の軍事支援を提供してきた。この中にはハイマース用のロケット弾4万発以上、対戦車ミサイル*ジャベリン2万基が含まれる。一見豊富に見える数字だが、現代戦の消費ペースは想像を超える。
ウクライナ軍は1日平均6,000発の砲弾を消費している。これは米軍の月間生産量に匹敵する規模だ。ロッキード・マーチンやレイセオンなどの防衛企業は増産に努めているが、精密兵器の製造には18~24カ月の期間を要する。
防衛アナリストのマーク・カンシアン氏(戦略国際問題研究所)は警告する。「米軍は現在、二正面作戦を想定した備蓄水準を大幅に下回っている。イラン攻撃を実行すれば、中国の台湾侵攻に対応する能力が著しく制限される」
日本への波及効果
この弾薬不足問題は、日本の防衛戦略にも直結している。日米同盟の根幹である「拡大抑止」の信頼性が問われているのだ。
三菱重工業は米国との技術協力によりパトリオットミサイルの部品を製造しているが、米軍の調達計画変更により生産スケジュールの見直しを迫られている。同社幹部は「米軍の備蓄状況は我々の事業計画に直接影響する」と懸念を示す。
川崎重工もCH-47ヘリコプターの部品供給で米軍と密接な関係にあるが、優先順位の変更により納期調整が頻発している。防衛産業関係者は「米軍の弾薬不足は同盟国の防衛産業エコシステム全体に影響を与えている」と指摘する。
戦略的計算の変化
弾薬制約は米国の戦略的選択肢を根本的に変えている。従来なら軍事的選択肢として検討されたであろうイランの核施設攻撃も、現在は「実行可能性の低いオプション」として位置づけられている。
バイデン政権は代わりに経済制裁と外交圧力を重視する姿勢を強めているが、これは必ずしも政治的判断だけではない。軍事的手段の物理的制約が政策選択を左右している現実がある。
国防総省の内部文書では、イラン攻撃に必要な精密誘導弾薬を2,000発と見積もっている。しかし現在の備蓄では、攻撃後の継続作戦や他地域での緊急事態対応が困難になるリスクが指摘されている。
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