善意の寄付が「所得」扱い?米国で相互扶助と税制の矛盾が拡大
クラウドファンディングやP2P送金で受け取った支援金が課税対象となる問題が深刻化。日本の災害支援にも影響する可能性は?
医療費のためのGoFundMe、災害時のVenmo送金、コミュニティでの現金支援—これらの善意による支援が、なぜ「所得」として課税されるのでしょうか?
米国では、デジタル決済プラットフォームを通じた相互扶助が急拡大する一方で、税制がこの新しい形の慈善活動に追いついていない状況が深刻化しています。インディアナ大学の研究者らが指摘するこの問題は、支援を受ける人々を逆に困窮させる皮肉な結果を生んでいます。
相互扶助の爆発的成長
相互扶助とは、公的機関や既存の慈善団体を通さず、個人が直接他者を支援する仕組みです。2020年5月時点で、米国全土に800以上の相互扶助グループが設立され、パンデミック初期の約50団体から急激に拡大しました。
GoFundMe、Venmo、CashAppなどのプラットフォームを通じて、食料支援、家賃補助、医療費支援、直接的な現金支援が行われています。リリー・ファミリー慈善学校の調査によると、パンデミック初年度、多くのアメリカ人は従来の慈善団体ではなく、困窮する個人や非公式グループに直接寄付していました。
こうした動きは、政府プログラムや非営利団体の支援が遅れたり、不十分だったり、アクセスが困難な場合に特に顕著になります。日本でも東日本大震災や能登半島地震の際に見られた、SNSを通じた個人間支援と共通する現象です。
税制の「誤解」が生む混乱
問題の核心は、商業取引を想定した税務報告規則が、慈善的な支援にも適用されることです。2021年に議会が承認した変更により、VenmoやPayPalなどの決済プラットフォームは、600ドル以上の支払いを受けた利用者に1099-K税務書類を発行することが義務付けられました。
この措置は、Lyftの運転手やペットシッターなど、ギグエコノミーでの所得申告漏れを防ぐ目的でした。しかし、医療費支援や災害援助として受け取った善意の寄付も、同じ基準で「所得」として扱われる事態が発生しています。
2025年7月、トランプ大統領が署名した税制改革法により、報告基準は以前の水準(2万ドル超かつ200件超の取引)に戻されました。しかし、メリーランド州、マサチューセッツ州、バーモント州、バージニア州では州レベルで低い基準が継続されており、混乱は完全には解決していません。
深刻な社会的影響
研究によると、相互扶助は低所得世帯、書類を持たない家族、障害者、有色人種コミュニティに偏って提供されています。これらの層は、金融プラットフォームや税務当局からの精査を受けやすく、税務や法的支援へのアクセスも限られています。
税務書類の受領だけで、政府給付の受給資格を失う可能性があります。所得が高すぎると判断される恐れがあるためです。また、報告規則が不明確だと、個人寄付者も直接支援を躊躇するようになります。
GoFundMeでは年間約25万件の医療費キャンペーンが作成され、がん関連の募金は平均2万ドルを目標としています。2025年のロサンゼルス山火事では、個人の募金活動の中央値が2万5000ドルを超え、数十万ドルに達するケースも複数ありました。
日本への示唆と課題
日本では、クラウドファンディングや個人間送金アプリの普及が進んでいますが、税制面での整備は米国以上に遅れている可能性があります。災害大国である日本において、個人間の相互扶助がより活発化した場合、同様の問題が表面化する恐れがあります。
現在の日本の税制では、個人からの贈与は年間110万円までが非課税ですが、クラウドファンディングを通じた支援がどう扱われるかは明確ではありません。特に、CAMPFIREやReadyforなどの国内プラットフォームが成長する中、税務当局の見解が注目されます。
記者
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