テクノロジーが社会運動を「加速」させる時代
ミネアポリスの草の根活動から見える、アメリカ建国以来続く「技術×運動」の伝統。スマートフォンから印刷機まで、テクノロジーは社会変革をどう後押ししてきたのか。
数千万人のアメリカ人が、ミネアポリスで連邦捜査官によって殺害されたレニー・グッドとアレックス・プレッティの映像を目にした。しかし、これに対する抗議活動を組織しているのは外部の扇動者や左翼過激派ではない。ごく普通のアメリカ人たちなのだ。
彼らはSignalのような暗号化メッセージアプリで連絡を取り合い、スマートフォンで移民税関執行局(ICE)や国境警備隊の活動を記録している。ICEBlockのようなアプリを使ってICEの活動を監視し、3Dプリンターで大量生産した笛を地域住民に配布して、連邦捜査官が近くにいることを知らせ合っている。
建国前から続く「技術×運動」の系譜
使われている技術は新しくても、このパターン自体は共和国成立以前から続く古いものだ。アメリカの社会運動と技術の関係を研究する法学者によれば、ミネアポリスの住民たちがしていることは、まさにアメリカの伝統そのものだという。信頼できる人間関係を基盤に、最新技術を活用して組織化を「加速」させる手法だ。
1770年代、アメリカ独立の機運が高まると、植民地指導者たちは「通信委員会」を結成し、1774年には大陸会議を設立した。彼らは印刷機の力を活用してトマス・ペインの『コモン・センス』などの小冊子を広め、新議会の最初の行動の一つとして、ロイヤリストの郵便局長の手の届かない安全な通信システム「憲法郵便」を創設した。
2026年にアメリカが建国250周年を祝う7月4日は、独立宣言の起草者たちが最終文書を反乱軍の印刷業者ジョン・ダンラップに送った日を記念している。つまり、アメリカが建国の記念日として祝っているのは、建国の父たちが「送信」ボタンを押した日なのだ。
1830年代、新国家における奴隷制をめぐる論争が始まると、蒸気式印刷機という新技術が奴隷制廃止運動を加速させた。手動印刷機よりもはるかに速く、安価に反奴隷制のビラを印刷できたからだ。
1848年の電信の導入は女性参政権運動の立ち上げを助け、ニューヨーク州セネカフォールズでの大会の知らせを広めた。それまで同様の集会は大衆の関心を十分に引くことができなかった。
テレビが変えた公民権運動
100年以上時代を下った公民権運動では、指導者たちがテレビという新技術を受け入れ、活用した。アラバマ州バーミンガムで当局が若者たちを攻撃する場面や、セルマ郊外のエドマンド・ペタス橋でのデモ行進者への攻撃を、全米の居間に映像として届ける機会を意図的に作り出した。これらの映像は公民権法や選挙権法などの法律制定への支持を結集させた。
現代では、スマートフォンやソーシャルメディアという新技術が、活動家だけでなく、これまで自分を活動家だと考えたことのない人々でも参加しやすくし、隣人を助けることを可能にしている。
技術の限界とリスク
ただし、コミュニケーション手段を運動そのものと混同してはならない。スマートフォンの向こう側にいる人々や、グループチャットのメンバーがいなければ、運動は存在しないのだ。
トランプ政権の強制送還政策を実行するために移民執行官が配置されているほぼすべての場所で、相互扶助ネットワークが芽生えている。技術に支援されながらも、技術に取って代わられることはない。
また、これらの技術の限界とリスクを知ることも重要だ。ソーシャルメディアでミームを投稿したり「いいね」を押したりするだけで、草の根活動への貢献を果たしたと考えてしまうと、運動からエネルギーが奪われる可能性がある。
デジタル技術には監視を促進し、ネットワークを破綻に晒し、人々を身元特定や犯罪行為幇助の告発といった危険にさらすリスクもある。建国の父たちが独立した郵便システムを創設したのも、このようなリスクを理解していたからだ。
記者
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