110億ドル市場の頂点に立ったCircle
CircleのUSYCトークンがBlackRockのBUIDLを抜き、トークン化米国債市場で首位に。総市場規模は110億ドルを突破し、機関投資家のオンチェーン移行が加速している。
110億ドル。これは今、ブロックチェーン上に乗った米国国債の総額です。そしてその頂点に、意外な顔が立っています。
「USDC企業」が国債市場を制した理由
Circle といえば、多くの投資家にとってステーブルコインUSDCの発行体として知られています。しかし2026年3月13日、その認識を更新する必要が生じました。Circleが発行するトークン化米国債ファンド「USYC」の供給量が約22億ドルに達し、BlackRock の「BUIDL」ファンド(約20億ドル)を抜き去り、トークン化米国債市場で首位に立ったのです。
Circleがこの市場に参入したのは2025年初頭のことでした。トークン化ファンドの先駆者であるHashnoteを買収し、そのプロダクトであるUSYCを手中に収めたのです。参入から約1年でBlackRockを追い抜いたことになります。
BlackRockのBUIDLは2024年5月に市場シェア46%を誇っていましたが、現在は18%まで低下しています。新規参入者の増加と競争激化が背景にありますが、それ以上に、USYCの急成長が際立っています。
成長の「火付け役」はBinanceだった
USYCの急拡大を読み解くカギは、BNBチェーン上のデータにあります。暗号資産取引所大手のBinance が、機関投資家向けデリバティブ取引の「オフエクスチェンジ担保」としてUSYCを導入したのです。2025年7月のローンチ以来、BNBチェーン上のUSYC供給量は18億4000万ドルにまで膨らみました。USYCの総供給量の約84% がこの一つのユースケースから来ていることになります。
仕組みはこうです。機関投資家はUSYCをBinanceのパートナー銀行(Binance Banking Triparty)またはBinanceの機関向けカストディプラットフォーム「Ceffu」に預けながら、同時に利回りを得ることができます。従来の取引担保では利息がつかないケースが多く、この「担保として機能しながら利息も稼ぐ」という資本効率の高さが機関投資家に響いたのです。
Circle CEOのJeremy Allaire氏は「トークン化された国債とレポをコラテラルとして活用することは、急成長している主要なユースケースだ」とXへの投稿で述べています。
市場全体が記録を更新中
これはCircleだけの話ではありません。トークン化米国債市場全体が2026年初頭から27% 増加し、110億ドル超 という過去最高値を更新しています。
興味深いのは、この成長が1月の暗号資産市場の下落期に加速したという点です。ビットコインやイーサリアムの価格が下がる中、投資家の一部がリスクを一時的に回避しつつも暗号資産エコシステム内に資金を留めるために、トークン化国債を活用したと考えられます。「オンチェーンのMMF(マネーマーケットファンド)」としての機能が、実際に機能したわけです。
トークン化資産の透明性も評価されています。ブロックチェーン上の国債トークンは、準備資産をリアルタイムで確認でき、24時間365日取引可能で、決済もほぼ即時に行われます。従来の金融インフラとの大きな違いです。
日本市場への視点:機会と課題
日本の機関投資家にとって、この動きはどう映るでしょうか。野村ホールディングス や 三菱UFJフィナンシャル・グループ はすでにブロックチェーンを活用した資産のトークン化実験を進めています。しかし現状では、日本の規制環境においてトークン化された外国国債を担保として活用するスキームは、法的整備がまだ追いついていない部分があります。
一方で、円安環境下で米国国債への需要が高い日本の投資家にとって、「オンチェーンで米国債利回りを得る」というコンセプト自体は魅力的です。金融庁がデジタル証券(ST)の規制整備を進める中、トークン化国債が日本市場に本格参入する日は、そう遠くないかもしれません。
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