カナダ新首相、中国との貿易協定で米国と対立の構図
カーニー首相が中国との貿易協定を推進し、トランプ大統領が100%関税で威嚇。カナダの「中間国家」戦略が問う国際秩序の未来とは。
100%の関税――これが、カナダが中国との貿易協定を結んだことに対するトランプ大統領の脅しだった。就任からわずか数週間で、北米の隣国関係に新たな火種が生まれている。
「第51州」発言の真意
マーク・カーニーカナダ首相は29日、州・準州首脳との会合で、過去6か月間に締結した12の新たな経済・安全保障協定について説明した。その中でも注目を集めているのが、中国との貿易関税引き下げ協定だ。
カーニー首相は「この協定により、カナダの農業従事者、牧場経営者、漁業者、そして全国の労働者に70億ドルを超える輸出市場が開かれる」と強調した。しかし、この発言の背景には、トランプ大統領からの強烈な圧力がある。
トランプ大統領は以前から、カナダを「第51州」と呼び、同国の主権を軽視する発言を繰り返してきた。さらに、カナダが中国製品の「中継地」になることを懸念し、100%の関税を課すと威嚇している。
「中間国家」の新戦略
興味深いのは、カーニー首相の対応戦略だ。彼は今月、スイスのダボス会議で注目すべき演説を行った。「ルールに基づく国際秩序は部分的に偽物だった。最強の国は都合が良いときに自分を例外扱いし、貿易ルールは非対称的に執行された」と述べ、大国の力の論理が支配する時代の到来を宣言した。
この演説は、明らかにトランプ政権への当てつけと受け取られている。実際、トランプ大統領は報復として、カーニー首相を「平和委員会」から除名した。
しかし、カーニー首相はひるまない。「我々は、インド、ASEAN、南米のメルコスールといった世界の巨大市場との貿易関係を進展させる」と宣言し、米国依存からの脱却を鮮明にした。
日本への示唆
この米加対立は、日本にとっても他人事ではない。カナダの「中間国家連合」構想は、米中対立の狭間で独自の道を模索する日本の立場と重なる部分が多い。
特に注目すべきは、カナダがASEANとの関係強化を打ち出している点だ。日本企業にとって、カナダが東南アジア市場への新たなゲートウェイとなる可能性がある。一方で、米国との関係悪化が北米市場でのビジネスに影響を与える懸念もある。
また、カナダの対中接近は、日本の対中戦略にも影響を与えかねない。G7の結束を重視する日本にとって、カナダの「独自路線」は複雑な課題を提起している。
主権か従属か
最も象徴的だったのは、米国国務省がカナダのアルバータ州の分離独立を推進する団体と3回の会合を持ったという報道への対応だ。カーニー首相は「我々は米国政権がカナダの主権を尊重することを期待する」と明言し、トランプ大統領との会話でも常にその点を明確にしていると述べた。
これは単なる外交辞令ではない。石油資源豊富なアルバータ州の分離独立は、カナダの国家統合にとって深刻な脅威だからだ。
記者
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