BRICSの「多極化」は本物か――湾岸危機が突きつける試練
イスラエル・米国によるイラン攻撃が続く中、BRICS内部の亀裂が露わになっている。多極化秩序の旗手を自任するこの連合体は、加盟国の利害が衝突するとき、果たして機能するのか。日本のエネルギー安全保障への影響とともに考える。
ホルムズ海峡を通過する原油タンカー1隻が足止めされるだけで、日本の製造業は数週間分の計算を狂わせる。その海峡を通る原油は、世界供給量の約5分の1にのぼる。
2026年3月現在、イスラエルと米国によるイラン攻撃が続き、イランは湾岸諸国への報復を展開している。この危機は単なる中東の地域紛争にとどまらず、国際秩序の再編を標榜してきたBRICSにとって、最初の本格的な「踏み絵」となりつつある。
BRICSという「多様性の連合」が抱える矛盾
BRICSは2024年の拡大で、イランを含む中東・アフリカ諸国を新たに迎え入れた。現在の加盟国数は10カ国を超え、世界GDPの約3割、人口の約45%を代表する規模に成長している。しかし、この拡大は影響力の増大と同時に、内部矛盾の深化をもたらした。
今回の湾岸危機はその矛盾を鮮明に映し出している。ロシアと中国はイランの「戦略的自律性」を支持し、西側の圧力に抵抗する立場を取る。一方、インドは慎重な距離を置く。その背景には、インドがイランのチャバハール港開発に多大な投資を行い、アフガニスタンや中央アジアへの回廊として位置づけてきた経緯がある。イランへの制裁強化は、この戦略的インフラを直撃しかねない。
加盟国がそれぞれ異なる国益を追求するのは当然のことだ。問題は、BRICSがそうした分岐を管理しながら「多極化協力」という共通プロジェクトを維持できるかどうかにある。
エネルギー安全保障という共通の急所
ホルムズ海峡の脆弱性は、BRICS内の主要エネルギー輸入国にとって死活問題だ。インドの原油・LNG輸入の約半分、中国の石油輸入の約40%がこの海峡を経由する。
日本も無縁ではない。日本の原油輸入の約90%は中東に依存しており、ホルムズ海峡は事実上の「日本経済の咽喉部」といえる。トヨタや新日本製鉄をはじめとする製造業、そして電力・ガス会社にとって、この海峡の安定は経営計画の大前提だ。
こうした背景から、BRICS内部では代替金融・物流インフラの構想が再び注目を集めている。BRICSペイと呼ばれる決済プラットフォームの整備や、ローカル通貨建て取引の拡大がその柱だ。西側が主導するSWIFTへの依存を減らし、制裁というジオポリティカルな武器に対する耐性を高めることが狙いである。
しかし、金融ネットワークの信頼性はスケールと規制の互換性から生まれる。それを短期間で複製することは容易ではない。BRICS加盟国自身が既存の国際金融システムと深く統合されている現実を前に、「完全な切り離し」は非現実的だ。より現実的なのは、グローバル市場との関与を維持しながら補完的な仕組みを段階的に構築する「多様化戦略」だろう。インドが進めるルピー建て貿易決済は、その慎重な実用主義の一例といえる。
中国とインドの間に横たわる「構造的不信」
BRICSの技術・インフラ協力において最も複雑な変数は、中国とインドの関係だ。2020年のガルワン渓谷衝突以降、両国は外交的な安定化を模索してきたが、深層の不信は解消されていない。
中国の5Gインフラや電子決済エコシステムの海外展開は、経済的連結性が地政学的影響力に転化しうることを示している。インドがこうした技術への依存を警戒し、サプライチェーンの脆弱性に敏感になっているのはそのためだ。
それでも、エネルギー安全保障や貿易ルートの安定、国際金融機関改革といった領域では、両国の利害は重なる。伝統的な西側主導の制度が正統性の挑戦に直面する中、新興国が部分的にでも協調できれば、国際システムへの影響は小さくない。
「ワシントン・コンセンサス」の後に来るものは何か
BRICSが提示しようとしているのは、単なる反米ブロックではなく、開発と統治の代替モデルだ。数十年にわたってグローバル・サウスの政策処方箋を支配してきた「ワシントン・コンセンサス」――自由化、民営化、財政緊縮――への異議申し立てである。
中国が強調する国家主導の開発モデルは、インフラ整備、産業政策、長期的な戦略計画を重視する。イデオロギー的純粋さよりも、測定可能な成果に基づく実験的政策立案を優先する姿勢は、多くの新興国に一定の訴求力を持つ。
ただし、BRICS内部の多様性ゆえに、単一の開発テンプレートを普遍的に適用することは難しい。それでも、この議論自体が、新興国が知的・政治的な主体性を主張し始めたという、より大きな変化を映している。
日本にとってこの動きは対岸の火事ではない。BRICSが代替金融・物流インフラを現実化させれば、円建て取引や日本企業のサプライチェーン戦略にも影響が及ぶ。また、グローバル・サウスが開発モデルの選択肢を多様化させる中、日本のODAや経済協力の位置づけも再考を迫られるかもしれない。
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