原油急落でビットコインが反発——市場を動かす「ホルムズ変数」
主要6カ国がホルムズ海峡の安全確保に向けた協調声明を発表。原油価格が約2%下落し、ビットコインは7万800ドルまで回復。しかし中東情勢の不透明感は続き、S&P500は200日移動平均を割り込んだ。
原油が下がれば、ビットコインが上がる。2026年の暗号資産市場は、今やそういう方程式で動いている。
何が起きたのか
2026年3月20日、英国・フランス・ドイツ・イタリア・オランダ・日本の6カ国が、エネルギー市場の安定化に向けた協調行動を取ると共同声明を発表した。声明はキア・スターマー英首相府から発出され、イランによる攻撃を非難するとともに、ホルムズ海峡での安全な航行を確保するための共同取り組みへの参加を表明した内容だった。
この発表を受け、WTI原油は約2%下落して1バレル93.80ドルとなった。そしてビットコイン(BTC)は前夜の安値68,900ドルから反発し、70,800ドルまで上昇。前日比で1%超の上昇を記録した。一方、イーサリアム(ETH)、XRP、ソラナ(SOL)などの主要アルトコインの上昇幅は1%未満にとどまり、ビットコインの動きに追いつけなかった。
さらに前日には、スコット・ベッセント米財務長官が「米国はイラン産原油タンカーへの制裁解除を近く検討している可能性があり、戦略石油備蓄(SPR)の放出も選択肢にある」と発言。原油価格の上昇圧力を抑える材料が重なった。
なぜ今、この動きが重要なのか
問題の本質は、暗号資産市場が「独立した資産クラス」として動いているのではなく、エネルギー価格と地政学リスクという旧来のマクロ変数に強く連動するようになっている点だ。
今週、連邦準備制度(FRB)は成長とインフレの見通しに対する「高まる不確実性」を表明し、市場参加者は利下げ期待を後退させた。利下げ期待が薄れると、リスク資産全般への資金流入が細る。暗号資産もその例外ではない。
さらに深刻なのは株式市場の動向だ。S&P500は木曜日に200日単純移動平均(SMA)を下回って終値をつけた。これは昨年5月以来初めてのことで、テクニカル分析上は「弱気転換」のシグナルとされる。株式市場でリスク回避の動きが強まれば、その波は暗号資産市場にも波及しやすい。
原油については、モット・キャピタル・マネジメントが顧客向けレポートで「WTIは重要なサポートゾーンである92ドル付近を維持している。このサポートが崩れない限り、上昇バイアスは続く可能性が高い」と指摘。オプション市場のポジショニングも、原油の一段高を示唆しているという。つまり、今回の下落が「原油高トレンドの終わり」を意味するとは限らない。
日本への視点:エネルギー輸入国の複雑な立場
日本が今回の6カ国共同声明に名を連ねたことは、単なる外交的ジェスチャーではない。日本はホルムズ海峡を通じて原油輸入の約80%超を中東に依存している。海峡の混乱は、日本のエネルギーコストに直接影響し、トヨタや新日本製鉄などの製造業から、電力会社、そして家庭の光熱費にまで波及する。
一方で、暗号資産投資家にとっては、今回の動きは「地政学リスクとビットコインの相関」を改めて考えさせる機会となっている。円安・インフレ懸念が続く日本では、ビットコインをインフレヘッジとして保有する個人投資家も増えているが、今回のような動きは「ビットコインはリスクオフ資産か、リスクオン資産か」という根本的な問いを再び浮かび上がらせる。
原油が下がればビットコインが上がる。ならば、原油が再び上昇したとき、ビットコインはどう動くのか。今の市場は、その答えをまだ模索している。
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